序章 「名前、教えて欲しい」 そう言う彼は朱雀候補生の制服を身に纏い、背に明るい陽射しを受け、優しく微笑む。 彼のこの優しく微笑む顔が好きだった。 「今から任務があるのよ。もし失敗したら名前を知っても意味はないわよ?」 「君も俺も失敗なんかしない」 「なんて自信よ。……じゃぁ、貴方も私も生きて帰って来ることが出来たら名前を教えてあげる」 「君は相変わらず焦らすのが好きだな」 「ふふ、でも約束が有る方が頑張れる気がしない?」 「そういうことにしておこう」 「うん、ありがとう」 そんな言葉を交わしながら、彼らは別々の道に進んでいったのだった。 これが永遠に運命を分かつ分岐点だったとも知らずに……… キミに出会ったことは間違いであったのだろうか? それとも……… ―――きっと僕たちは答えを知らない。 |