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2020/12/29 (Tue) 01:42



「ほんと無理、顔も見たくない」


目の前でどこまでも澄ました顔をしているこの男、五条 悟にそう告げてみれば、アイマスクで目元が見えていないが、少しも表情を変えていないのが分かる。


どうしてこんな暴言を吐き捨ててみたかと言えば、この目の前の男は昨日は一日中任務だと言っていたので、私は一人街に繰り出し、久しぶりの休暇を楽しむべく買い物に行ってみれば、帰りがけに背が高くショートカットが似合うモデル風の女性と楽しく話し込んでいた悟の姿を見つけた。それはもう私とは正反対のタイプの美人だった。

たしかにこの男は高専に通っていた頃から、凄まじいモテ方をしていた。
特に昔は仰々しいアイマスクではなく、少しイキった丸いサングラスをかけていたものだから、今以上にモテていた。
外ですれ違う女は殆どが振り返り、彼と同性である男ですらも振り返るほどだ。

だから昔は女癖も悪かった、ほんとドン引きして呆れるほどに。
絶対こんな男みたいなのとは付き合わない、なんて同期で友人の硝子にも言っていたが、人生絶対なんて言葉は存在しないのだ。
気が付けばこの五条 悟という男を好きになってしまっており、高専を卒業する少し前から付き合い始めた。
硝子にはゲテモノを見るかのような冷ややかな眼差しで見られたが、お前ぐらいしかあいつと付き合える人間も居ないか、と大きな溜息を吐かれた。

けれど、予想外にも付き合い始めてからは彼の悪い女癖も落ち着きを見せ、大きな喧嘩をすることもなく、呪術師同士の恋愛を楽しんでいた、はずだった、昨日までは。


「結局、悟は何も変わらないんだね」


そう吐き捨てて、彼の部屋の鍵をキーケースから外して、目の前にある高そうなガラスでできたローテーブルの上に置けば、カツンと冷たい音が耳に響いた。
彼の顔を見れば、冷静な判断を失い、この場から動くことが出来なくなってしまうと思い、彼を視界に入れないように立ち上がり、部屋から出ようとすれば、強い力で右腕を引かれ、バランスを崩して床に転がりそうになれば、強い衝撃は訪れず、彼の足の間に収まるようにして着地した。


「僕の言葉を一切聞かずに自己解決して君は僕と別れる気?」


その言葉には少し怒りが含まれていて、どうして私が怒られなければならないのかと彼の顔を見るため、振り返ってみれば、いつの間にかアイマスクを取り、ガラス玉のように綺麗な青色の瞳と目が合う。

昔より話し方も柔らかく、丸くなって、一人称も僕、なんて変わってしまったけれど、その瞳は昔から変わらなくて、息を呑むほど美しい。
いやいや、そうではない。根本的なことは何一つ解決していないのだから。


「言い訳なんて聞きたくないし、悟から別れて欲しいって言われるくらいなら私から別れてやる」


やっぱり私はどうしようもなく目の前のこの男が好きで、どうしても切り離せない。
青色の瞳に見つめられれば全てが見透かされているようで、悔しくて目を逸らせば、彼の大きな両手が私の両頬を掴み、半ば無理やり顔を上げさせられれば強制的に彼の瞳と再び目が合う。


「昨日の見た?」

「見た」

「どこから?」

「あんたが楽しそうに美女と話してるところ」



そう言えば彼は魂でも抜けてしまうのではないかというほどの大きな溜息を一つ吐き、見るなら最後まで見ろよ、と呟いた。


「は?」

「だーかーらー、あれは確かに逆ナンにあって話しかけられたからとりあえず話し合わせて終わらせようとしてたけど、なかなか引かないから嫁が待ってるからって断ったの」

「え、悟いつ結婚したの?私、不倫相手だったとかもっと無理なんだけど」

「ああああ、、もう!なんでそうなるかなぁ。僕が好きなのは君だけなんだから、君以外と結婚するわけないでしょ?昔から短気で馬鹿だとは思ってたけど、ここまで馬鹿だとは思ってなかった」


けど、そんな君のことが一年の時から好きだったんだから、僕はもっと大馬鹿だよね。なんて言ってのけたので、言葉の理解が追いつかない。

一年の時から好きだった?

そんなの初めて聞くし、その頃のこの男は下半身猿なんじゃないかと思うほど色んな女を取っ替え引っ替えして遊んでたじゃないか。



「や、その頃、何百人と女の子居たじゃん」

「それは君が手に入らないと思ったから、やけくそで」



だって、君、傑と仲良かったじゃん。僕とは喧嘩しかしなかったし、ってこんなこと君に言うはずじゃなかったんだけど。僕、超ださいじゃん。と、言う彼は耳まで赤くなっており、真実を告げていることが分かる。


「ほんとに言ってる?」

「本当に言ってる」

「ほんとのほんと?」

「本当の本当じゃないと、こんなダサいこと暴露しないでしょ」



だから、お願いだから別れるとかそういうこと言わないで、僕、その言葉聞くだけで死にそう。と、聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で呟きながら私の肩に顔を埋める彼は、いつもの強気な姿からは想像が付かないほど弱々しかった。



「…ごめんなさい」

「ん、」

「好きだよ、悟。私は高専時代のクズみたいな悟も今の丸くなったおちゃらけた悟も全て好きだよ」

「ん、」

「別れたくなんてありません」

「ん、なんか一言余計なことも聞こえたけど、好きなら何でもいいや」



私の肩から顔を上げた彼は、今度は優しく私の頬をなぞり、唇を親指で押し上げてから、そっと口付けを一つ落とし、耳元でこう告げた。



「何があっても一生離す気なんてないほど愛してるんだから、覚悟してね」




fin.



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