きょせい

一宿一飯の礼。いや一宿でないだろ居候、ある夜俺のバイト先にいきなり姿を現し初対面でそっちが申し込んできてからもう一ヶ月くらい経ったはずだ。しかし出てけと言えない理由でもあるが一飯でもない、いつもうまいメシをありがとう。いや、とは確かに思うがこれはいただけない。何故「礼」が身体で? 今更でもあるし。俺が求めること例示メシを作るなどをすればいいのにまるで俺の意にそわぬ行動、首筋に吸い付く犬っころ。盛りのついた犬みたいな声を立てて俺の名前を連呼する。静雄静雄、うるせえ気安く呼んでんじゃねえ駄犬。気持ち悪いんだよアホ。こいつが朝寝ぼける俺に着せた服をこいつが剥ぎ取って行く。朝には飼い犬だったのに帰りの挨拶を口にしたなり狂犬となった。こちらが素なのか?と思えるほど堂にいった手つきはそれなのに性急で余裕の色はない、お笑いだ。この馬鹿は、俺を屈服させようと。征服しようと躍起になっているのだ。そんなキャラでもねえくせに、何をそんなに焦る必要があるのか、といぶかしむくらい。どうも不感症気味の俺にはその愛撫はかけらも響かない、それが気の毒にというかこちらが悪いことをしている気分になるのだから犬の雰囲気は卑怯だ。幽に向ける以外ほとんど閉じている俺の隙間に切り込み付け込み、ついには仕方がないかとほだされてしまいそうになる。虹色の髪が裸の胸をくすぐる、サングラスを奪われた俺に縋る赤と青の瞳。どうした、とそこで初めて静かに問い掛けると、人工の二色は甘くにじんだ。静ちゃん、という響きがどこかの虫けらのものに思えて、ぞっと俺の背筋を震わせた。
目を醒まさせようと誰かを殴ったのは初めてだ。ノミという名の寄生虫は、ちゃんと犬から剥がれただろうか。











いざやくんはわんちゃんにいらぬことを言う

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