美形な男性四人のプリクラがゲーセンに貼ってあったんです

プリクラ。プリントクラブ。女子中高生を中心に、ケータイに写真撮影機能が搭載されて久しい今なお人気根強い写真シール作製機。ゲームセンターなどに設置されている。説明するまでもないかもしれないが重ねて言おう、女子、中、高、生。俺の染色体は生まれた時から恐らく死ぬまでずっとダブルエックスにはならないしとっくに酒もタバコも嗜める歳になった。が。三日前、何をトチ狂ったのかあの、暑いくらい真っ白なライトが照らす箱の中に入ることがあった。
戌井、幽、新羅。
異色の3人とその共通の知り合いである俺が、本当に偶然、なんの作為もなく街でばったり顔をあわせた。全く同時に、十字路の東西南北から中央へ。
俺は仕事帰り、戌井はパチンコの帰り、幽は貴重なオフに散歩中、新羅は・・・
「セルティの、服をね!」
なんだかキモかったので殴った。きっとナースだセーラーだ、そういった変態の店で購入できる変態思考の人間の為の服だ。人の趣味に口出しする性分でもなかったがあの好感のもてる無口な友人が変態の毒牙にかかるのをみすみす見たくはなかった。そうだ、奴だけは俺が行くな絶対行くなと引き止めたんだっけ。すると戌井が徒歩三歩のゲームセンターを指差し、何かの縁だからどうよ、と俺達を促したのだった。俺も幽もヒマだった。新羅の奴だけは渋ったが道路のコンクリートを少し割ったらおとなしくついてきた。「ううう静雄め、僕の親友のくせして僕の恋路を阻もうってのかい、馬に」殴った。セルティはさっさとこんなやつとはわかれたほうがいいとおもう。俺もそろそろ切ったほうがいいのかもしれないなとその時熟考した。変態の親友だなんて流言が蔓延する前に。
それで真っ先に戌井が飛びついたガンシューティングゲームには対戦相手として俺も参加したが、奴は異常なほ銃捌きがどうまかった。もしかしたら日常的に銃を撃ってるんじゃない戌井さんと幽がぽつりと言うとケラケラ笑っていた。俺は面倒はごめんなのでガンマニアやヤクザじゃないならいいなとも思った。パチプロ並の腕前のパチンコにしてもそうだが、きっと器用なだけだろう。格闘ゲームタイピングゲームをざっと流して、まつげがこれでもかというほど上がった女が壁一面にプリントされた機械をまた戌井が指差した。やったことがないから、ということだったらしいが。
「やりたくねー」
「なんで? 平日のこんな時間だし、空いてんだからさ」
「なんでヤロー4人で狭い機械ん中」
「・・・幽平君、ドウゾ」
「兄貴、俺久しぶりに兄貴と写真撮りたいんだけど」
「・・・ん、仕方ねーな・・・」
「君って実は結構御しやすいよねぇ。臨也も早く気付」
「黙れ闇医者」
全員成人してる、すくすく育った男が入るとやはりやや狭かった。照明が照り付け真っ白な室内。一人ずつ百円を投入。初めてだからとか言ってたくせにさくさくパネルを操作してゆく戌井、鳴り響く高く明るい合成音はいチーズな感じ。どんな顔をすべきかわからずに現状の正直な心情、ああ馬鹿らしい幽の頼みじゃなかったら、というのを吐露。一枚撮る毎に確認できる写真を見ると平和島兄弟と他のテンションの差がものすごかった。素の幽は俺以上に感動が薄い。「・・・幽平くーん、今君がやってる月9の主人公の名前ってなんだっけ?」「ワタナベコウキですけど、戌井さん」「よしっ、今から君はワタナベコウキだ」「・・・『荘園公領制は、俺が守るッ!』」大輪の花がほころんだのかのような見る者を魅了する笑顔にキメポーズ、ワタナベコウキになる幽。我が弟ながら、俺はそこにプロを見た。
「ほら、アンタも」
戌井が笑え、というように口角をあげる仕種をしたが無視。100円あったらハンバーガー食えんだよなあとしんみり考えている俺の耳に次録るよーとの俺の合成音。
シャッターが鳴った瞬間に、不意をつかれ戌井にキスされた。


何故三日前の話なんぞを持ち出すかと言えば、すっかりはまってしまった麻雀ゲームをしにまたそのゲームセンターに足をのばしたからだった。ここで撮った奴が余ったプリクラをプリ機の側面にベタベタ貼っている。その中に紛れるように、3人の男にキスされたり引っ付かれたり「セルティと俺の恋路を邪魔した君で着せ替えごっこしてやろうかーっ」なんて邪悪な変態の笑顔で服をめくられたりしている俺のプリクラを今、発見した。
更にメール着信でバイブ設定の携帯が揺れ、見ると天敵ノミからのものだった。これなんのジョーク?という文面に添付画像。撮った後のお楽しみ、プリクラ落書き機能で施された女装の俺の一枚。あの時落書きブースに入ったのはワタナベコウキから戻った幽だったな・・・。それにプリクラ印刷にかかる時間に赤外線で画像を受け取ったという新羅のツラが浮かんだ。ノミからのメールの題名には転送の字があった。

なあ俺は、誰から殴るべきだろう?

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