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- ナノ -
コイシイヒト


「女って、一回ヤっちまったら興味失せちまわねぇ?」

言ってしまってからちらっとやべぇなと思ったら案の定。
三人とも箸が完全に止まり、こっちを見ている。

一楽のカウンターに並ぶのは、キバ、ナルト、チョウジ、シカマルの四人。
なんとなくそんな四人で、なんとなくこうして並んで、なんとなく全員味噌ラーメン食べながら、なんとなく誰かが、
「キバは女とっかえひっかえだけど特定の彼女を作る気はないのか?」
と聞いたところだった。
ナルトが上を、チョウジが下を向いて黙りこんだので、シカマルが一番遠くからキバに声をかける。
「なんか俺わかるわ、それ」
今度は、だろ!?という顔のキバと、マジかよ!?という顔のナルトとチョウジがシカマルを見る。
「なんつかさ、口説いて口説いてデートにこぎつけてさ、んで今度はどうやって二人きりになって脱がしてやろうかってがんばってさ。いざ脱がしてヤっちまったら、なんかもういいかなって」
なっちまうんだよなー、の部分は隣のナルトにしか聞こえなかったかもしれないが、そう言ってキバはラーメンをすすりこんだ。
ナルトはまだぼんやりとした目でチャーシューをつつきながら、
「なんかソレ…違う気がするんだってばよ…」
独り言のように言う。
「うまく言えねェんだけどよ…」
そのままチャーシューをつまみあげてばくりと食べると、再び麺に取りかかる。
視線を食らっただけで済んだシカマルも再びすすり始めるが、一人箸を止めたまま再びうつむいたチョウジがその姿勢のまま、
「キバは…ほんとに好きな子とつきあったことがないからだと思う」
穏やかな声できっぱりと言ってからキバへ向き直り軽く睨んだ。キバはあからさまに気分を害したという顔でチョウジを睨みかえすが、チョウジは全くひるまない。
「手当り次第になんてやめてほんとに好きな子にちゃんと向かったらいいじゃないか」
はったと睨みあう二人に挟まれているがまるで気づかない風情のナルトは、目を細めてそうだよなァとのんびりと呟き、それから急に満足げに頷き、
「だな!うん、キバ、お前手当り次第やめろってばよ。んで、ちゃんと好きな子んとこ行ったらいいんだ、チョウジってばいいこと言うな〜」
そのままチョウジに笑いかけるとチョウジもキバからナルトへ視線をうつし、二人で嬉しそうに笑いあった。
その瞬間、キバは片手でどんぶりを持ち上げると具も麺もスープもいっしょくたに無理やり乱暴に飲みこみ、割れなかったのが不思議なくらい乱暴にカウンターへ叩きつけるようにして置くと、
「俺のっ、俺のっ、ほんとに好きなやつはなぁっっっ!!!」
立ち上がって怒鳴り散らすが、一瞬涙が滲んでくるんじゃないかという気がしてきて言葉を切ってしまう。
「俺のほんとに好きな女は、もう永遠に俺の手には入らねぇんだよっっっ!!!」
ナルトとチョウジがしまった!という顔をしてキバを見上げるがもう遅い。
どんぶりを置いたのとは逆の手でラーメン代の小銭を乱暴に置くと、後ろも見ずに出て行ってしまった。
「し、知らなかったよ…お、俺たち…」
「悪いこと言っちまったってばよ…」
永遠に、という部分でふいに愛おしげに幼子を抱く紅の姿が脳裏を過り、ナルトとチョウジはますます青ざめた。思えば、自分たちの同期全員が今も無事で生きていることが奇跡でもあって。任務で命を落とすことはもちろん、何度か受けた襲来で木の葉隠れの里も近年夥しい数の死傷者を出している。
その可能性もある…。
しょんぼりして食欲をなくしたような二人をよそにすっかり食べ終えたシカマルは、
「ごっそさん。俺も食べ終わったし、行くわ」
代金を置くと静かに出て行った。


赤丸にまたがってめちゃくちゃに走り飛ばしてるかもな…と思いながらキバを追いかけてみると、珍しくとぼとぼとと歩いているのがすぐ見えた。シカマルは走り寄ってキバの隣に並ぶ。
二人はしばらく黙ったまま歩いていたが、
「しょうがねぇよなぁ…」
前を向いたまま、ぼそりとシカマルが呟いた。
「あいつらの態度はムカつくけどよ。女どもがそれで幸せっつーんなら、俺たちにはどうしようもねぇよなぁ」
キバはわずかに目を見開いてからそっと横のシカマルを見る。
「俺の『ほんとうの』ってやつ?はは…。気づいたときにはもう遅かったんだけどよ」
チョウジに持ってかれちまってたよ…シカマルが自嘲的に笑うのを見て、キバは視線を戻した。
確かに。
気づいたときにはもう遅かった。
まさかあの、真っ直ぐ前しか見ていないような、自分の熱で相手も焼き切ってしまいそうな、明るい太陽のようなナルトが、
少しの熱でも萎れてしまいそうな、ひっそりと咲く小さな花のようなあいつを、
「ほんとに…まさかヤツがかっさらって行くなんて…誰が想像するかよ…」
語尾がわずかに鼻声になってしまったことに、頼むから気づかないでくれよ、と思いながら…


二人は視線もあわせぬまま並んで歩き続けた。


  モノスゴク モノスゴク コイシイヒトノナマエハ

   エイエンニ エイエンニ コノムネノナカ

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