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- ナノ -
微熱


ふぃ、と目蓋が開く。

きっちりと閉めたはずのカーテンが10cmほども空いていて、そこから差し込む光のせいで妙に明るい部屋で、ナルトはぼんやりと目を覚ました。
いつもの自分の部屋の、自分のベッドの上。

伸びをしようとして自分の右脇に顔を埋めている存在に目をやり、ちょっと笑いかけてから起こさないようにと用心して左腕だけをゆっくりあげて伸びをする。

そのまま見つめていると耳にかすかな寝息が届く。

どうしよう…キスしたいな…

このままでは彼女の唇には届かない。身体を動かして体勢を変えねばならず、そしたら彼女を起こしてしまうかもしれない。

自分に身を寄せ、安心しきっている様子がいとおしくて。
それを、起こしてしまうというかたちで破るのはもったいなくて。

ナルトはなるべく身体を動かさないように…と用心する。

寝付くときは彼女の肩を抱いていたはずの右腕がゆるく伸ばされていて、
その指にさわる彼女の髪の先をつまんで、そうっともてあそぶ。
わずかにひんやりとするなめらかなその感触を楽しみながら、自分の身体に寄り添う彼女の存在とぬくもりを感じぬこうとするのか、半身の感覚が過敏になっていることに気付く。

朝、目が覚めて、となりに誰かが居るって。
なんてステキなことなのだろうか。

かすかな寝息が耳に心地いい。
そこに自分の心音が重なり、彼女と自分の鼓動が同じリズムを刻んでいることに気づく。
鼓動とともに伝わる微熱に、とろかされそうになりながら。身体だけでなく心もともに寄り添いあわせて。

自分の胸にそっとのせられた彼女の手にナルトは左手を重ねて置き、彼女の髪に口づけした。

独りじゃない。

なんて幸せなんだろう。

甘くあたたかな薫りをそっと吸いこみ、世界でいちばん静かで幸せな時間をしみじみと味わう。

誰よりも大切な存在をこの腕に抱くよろこびを、自分に与えてくれたひと。

“かけがえのない”という言葉の本当の意味を、自分に教えてくれたひと。

穏やかな幸福感で部屋が充たされていく。

まだ熱を伴わない半透明な朝の光の中、まもなく終わるひとときをゆっくりと惜しむ。
彼女と自分の体温だけであたためた、世界でいちばんちいさな2人だけの居場所で。



もうすぐ、彼女が目を覚ます。

自分の腕のなかから、真珠色の瞳で自分を見上げて、
すこしかすれた甘い声で自分の名を呼ぶ。

想像するだけでうれしくて泣き出したくなるような光景。

身震いするほどのこの嬉しさを、そしてどれほど愛しているかを、今日はどうやって彼女に伝えよう!


ナルトは、額を彼女の頭にそっと寄せながら、息をひそめてその瞬間を待っている。


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