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ショコラより愛を込めて!


「は〜っ、ごめんごめ〜ん!お待たせ〜!」
「お疲れー」

到着するや、いのは下げていた大量の紙袋類をテーブルにどさりと乗せた。すでに座っていたサクラは飲み物を飲みながら片手をひらひらさせ、ヒナタは両手でカップを持ったままわずかに首を傾げてにこりと微笑む。

「あっつー!どーしよ、フラペチーノにしよっかなぁ」

立ったまま席に置いた鞄からごそごそと財布を取り出そうとしながらいのが言うのへ、

「すぐちょーどよくなるからホットでいいわよ、保障する!」

お店が貸してくれるブランケットを、膝に掛けるというより腰にぐるぐるに巻きつけたサクラが拳を軽く握って請け負った。

いのが注文を終えてカップを持って戻ってくると、サクラもヒナタも興味深そうにいのの紙袋を覗き込んでいる。

「たくさん買ったわねぇ…」

ブランケットを広げて座ろうとするいのを見上げてサクラが感心した声を出す。

「毎年買ってるのと、去年買って良かったのと、今年お初のと…増えてっちゃう一方よね〜!」

ふふふ、と笑いながら見事な金髪をさらりと流しながら席につく。

「2人のは?」
「はーい!これよ♪」
「ひ、広い席…取っておいて…よかったよね…」

いのほどではないと言いつつサクラもヒナタも複数の紙袋をテーブルの真中へと乗せた。

「カンプリーニの狙ってたやつ!売切れてた!」
「ざ…残念だったよね…」
「色々無くなってたわよね〜、個数限定のやつはやっぱ初日じゃなきゃ無理よ!」

口々に言いながら取り出すそれは凝った箱に納められた宝石のようなショコラたち。
あちこちのバレンタイン用特設会場を駆け巡った後の戦利品の報告会と反省会、そして…配分の相談会なのだ。
温度管理が必要な繊細なお菓子だから、カフェの外席で!と決めている。
飲みかけのカフェはそっちのけでお店開きが始まった。

「アンタ!ほんとにパトリック・ロジェ好きよね!毎年買ってない?!?」
「だぁって〜♪美味しいし、何より見てよ〜♪この美しいパッケージ♪」
「美味しいのは認めるけど、高価すぎるわ!それで予算飛んじゃう…」
「あら?ヒナタ、それドゥバイヨル?」
「うん…♪」
「そこのパッケージも毎年素敵よねぇ〜♪」
「でも中身がちょーっと少ないんだよねー」
「…そーゆーあんたはピエール・マルコリーニか…わっかりやす〜」
「リクエストなんだから仕方ないじゃない!」
「誰の?!」
「だ…誰からの…?!」
「カ…カカシ先生の…」
「…はい?」
「…『真っ赤なハートが欲しいなぁ♪』とかふざけたこと言われて…前に買ってったらウケちゃって…それで毎年これでって決まっちゃったのよ…」
「真っ赤なハート…それ、教え子に言うか…」
「ふふふ…面白い人だよね…カカシ先生」
「『彼女が出来たら言って下さいよね!ソッコーでやめますからね!』って言ってあるんだけどさ…」
「ああら♪彼女からはとっくに素敵な生チョコを頂いてるわよ、きっと♪く・ち・う・つ・し・で!」

いのがウインクしながらわざと色っぽく言うと、サクラはげっ!と言わんばかりの顔をし、ヒナタはぽっと頬を染めた。

「そ、そんなことより!義理チョコ決まったの!今年はどーする!?」
「そうなのよねぇ〜」

一通り広げられた箱を眺めながらいのがカップに手を伸ばすと、2人も思い出したようにそれぞれの飲み物を手に取った。

この時だけの期間限定でやってくるショコラも多いので、ついつい自分が食べたいものを中心に買ってしまう。見ているだけで心浮き立つ、この繊細で美しい菓子は…

高価い。

ちょっとびっくりしてしまうほど高価いのだ。
だからといって買い控えすることなど到底無理なのだが、果たしてこの美味しさを…価値を…男どもは…

「わかってくれてる…かなぁ…」

ふぅ…とため息をついたいのに同調するようにサクラもヒナタもうつむいた。

質より量!がはっきりしているチョウジ・ナルト・キバだけかと思いきや、サクラはサイに、ヒナタはシノに、それぞれ惨敗してしまっている。

「サイにあげようったってムダよ」

サクラが低い声でロジェの箱を指先でつつく。

「うそ!こんなに美しいのに!絶対喜ぶと思ったのに!」
「全然違うとこのだったけど、『サクラはさ、ショコラは繊細なお菓子なのよ!なんて言ってたけど、その繊細な菓子とやらに味とは無関係なセンスの欠片もない模様や色がぺったりと塗りたくられていたりするのはいったいどういう意味なんだい?』とかって延々絡まれたわ…昔…」

ふふふふふ…とサクラが乾いた笑いをもらす。

「私も…以前シノくんに…リシャールのウルトラマンスを…楽しんでくれるかなって思って贈ったんだ…けど…」
「うわ…マジ…」
「が、頑張ったわね…ヒナタ…」

感心する2人をよそにヒナタが続ける。

「量が少なすぎるだの…選んだところで気に入ったものがもっと食べたくなってもこれだけしかないなら意味がないとか…時々…思い出したように…」

かくり、と項垂れたヒナタの背を不憫な…と、いのとサクラがさすってくれた。

「こーゆーとき便利なのはやっぱゴディバよね」
「でもさ〜メジャーになりすぎてて、ちょっと今更って感じもしな〜い?」
「あ…あとね…パッケージが可愛らしすぎて…気後れしたり…本命?って勘違いする男の人も…多いとかって…聞くよ…?」

ダメかぁ〜と天を仰ぐ。

「…サダハルアオキ?」
「義理にするには高価い。しかも量足りない」
「でも…量は望んじゃダメって…思ってもらうのも…大事…かも…」
「そーよ、義理なんだからさ!」
「じゃ、それならそこそこ美味しくってってことだから、それなりに投資はするってことでOK?」

いのの言葉に2人も賛同する。

「それじゃ…」

と、買い物ついでに貰ってきたチラシや冊子を広げて同期へ渡す義理チョコの選定が始まった。




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