廿漆 * 藤花の宴
「美味し〜い♪」
「甘酢の加減も絶妙だわ…!」
天ぷらや酢の物など、藤の花の料理を皆で、パリパリ、しゃくしゃく、さくさくと食べる。
「うん…香りがいいな…色も美しい」
皆が感激する中、ナルトがひとり首を捻った。
「なんつーか…そんなに美味いもんでも…ないよーな…」
たちまちサクラといのからギッ!と睨まれてしまうが、隣でヒナタがおっとりと笑った。
「そ…うだね…味というより…季節を食べるような…ものだから…」
「季節を食べる?!」
んなもん、食べ物じゃねーじゃねーか!と言わんばかりのナルトの顔に、ヒナタがくすくすと笑う。
「今年も…藤が見事に咲きましたね…っていうことだっ…ていうか…お花見が出来てよかったね…ってこと…というか…」
考え考え教えてくれるヒナタのことを可愛くて堪らない!という様子を隠しもせず聞いていたナルトは、
「そっか!今年もちゃんと春が来たな!とか、そーゆーこと?」
と、ニカッ!と笑いかけ、ヒナタも、
「そ、そう…!そうです…ナルトくん…!」
はにかみながら嬉しそうに笑い返す。
ケッ!とそっぽを向いて毒づいたキバやサクラたちのことも笑いながら日向の人々が、
「それではそろそろ…こちらもどうぞ、」
と、空豆や新玉ねぎなどの天ぷらも運んできてくれた。
「きゃあああ♪」
「美味しそ〜♪」
それから、稚鮎も何匹かずつ。
「おー♪今年も出たっ♪」
「…うむ」
「これは?」
我愛羅の質問にはキバが、「鮎、っつー川魚の子供だよ」と教えてやる。
「あつッ!にがッッ!あっ!!でも美味ーッ!」
「…静かに食べらんないの?ナルト…お行儀の悪いっ!」
サクラが同班として恐縮する。
「さくさくして美味いってばよ♪」
「ふむ…ほのかに…風味が…?」
「はい…!鮎は…『香魚』とも言って…香りがいいことも好まれていて…さすがだね…我愛羅くん…」
「!!!オレも!オレも気づいたもん!気づいたもんってばよー!!」
ムキになるナルトに我愛羅がたまらず笑いだし、
「安心してくれ、ナルト。お前からヒナタを取り上げる気は毛頭ない」
「うっ…!でっ…でも…っ…!」
「全く…!」
我愛羅がナルトの肩を叩きながら笑い、皆もそれを見て笑ってしまう。
最後に酢漬けの藤の花を細かく刻んで混せたご飯のおむすびが出て、宴は終わりを迎え始めた。
煎茶の準備を手伝いながら、ヒナタが、
「あっ…そうだキバくん…」
とキバの方を向き、申し訳なさそうに首をすくめながら手を合わせると、
「来週の…お花見は…無しになっ…て…しま…うの…ごめんなさい…」
どんどん小さな声になってしまいながら謝った。
「…今日突然乱入などするからだ」
「ふん…!」
シノが咎めるような視線をキバに向けたが、キバは頭の後ろで腕を組ながらそっぽを向いた。
「…ほんとに…ごめんなさい…」
「ヒナタ…ヒナタが謝ることではない…何故なら…」
そうだそうだ!と闇雲にヒナタを庇うために乱入してこようとしたナルトを手で制しながらシノが続けた。
「日向の側の予定が狂ってしまったからだ。来週用の準備をすべて使い果たさせてしまったに違いない…。キバは反省すべきだ」
いつになく冷たいシノの物言いに、ナルトたちは不思議に思いながらも恐縮した。
確かに、自分達の突然参加は予定外すぎただろうと思う。それなのに充分すぎるもてなしを受けてしまった…と顔を見合わせていたときに、
「…来週?」
サクラがぽつりと呟いた。
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