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テーマ「推しとの恋」
- ナノ -






廿陸 * そっと、もっと

.........。


「なぁ…オイ!」
「ちょっと…ねぇ」
「…」
「誰が言いに行く〜?」
「…困ったものだな」

ようやく想いを通じあわせた二人を微笑ましく思って見守っていた皆だったのだが、
二人がお互いをきゅうっと大切そうに抱き締めあったまま…どのくらい時間が経っただろうか…。

「おっ二人さ〜ん?」
「ねーっ!あのーっ…あのねー?」
「どうやら…無理…のようだな…」

共に眼を閉じてゆるりと微笑んだまま、ヒナタはナルトの胸に、ナルトはヒナタの頭に頬をつけ、呼吸を合わせるようにじっと抱き締めあっている姿は…確かに見ているこちらも幸せになれそうな…微笑ましいステキな光景ではあるのだが…。

「あーっ!もうダメ!我慢できないっ!」

ついにサクラが音を上げた。

「こぉら!ナルトォ!ヒナタも!いーかげんにしなさーい!」

サクラの一喝に、二人はビクッ!と飛び上がり、お互いから手を離してもじもじと決まり悪そうにそっぽを向いてしまった。

「アタシお腹空いたの!もう行くわよ!」

ざくざくとわざと強く踏み込みながら戻っていくサクラへ、いのが追い付きそっと肩を叩く。

「さっすがお邪魔虫♪」
「…うっさいわねっ!」

あんなにも幸せそうに寄り添っていた二人を自分の一言で引き剥がしてしまうことになったのを見て一瞬サクラが顔を歪ませてしまったのを、いのはちゃーんと見ていてくれたらしい。

「ま、せいぜい頑張んなさい♪」
「…ふん!」

素直に『気遣ってくれてありがとう』と言えないのは、サクラのいのへの精一杯の意地なのか。それすらもお見通しのいのは全く意に介さない。束ねた長い髪を揺らしながら踊るような足取りでサクラの真後ろをついていく。

「おー、そーだな、そろそろ行くか」
「それがいい。何故なら、待たせ過ぎて天ぷら用の油の温度があがりすぎては危険極まりないからだ」
「…二人は食したことがあったのだったな。色が違うと味が違うものなのか?」
「んー?そだな…」

男共も会話しながら引き返してゆく。
皆の背中を見送りながら、ナルトとヒナタはまたそっと向かい合った。
「行こうか?」というように差し出したナルトの手を、取るべきかどうか迷うようにヒナタが見上げる。
いつもなら「ニシシ!」と全開の笑顔を向けるだろうナルトが、伺うような遠慮がちなヒナタの視線に応えるように淡く微笑む。それを見て安心したような顔をしてゆっくり微笑んでいくヒナタを見て、ナルトがさっきよりにっこりと笑い返す。
ヒナタがそれに照れたように少し眼を伏せ、次ははにかみながらもっと笑顔になる。

いつのまにか手を取り合いながら、笑顔を交わしあって深めて行きながらも全く動かない二人に、

「ちょっとーっ!それはあっち戻ってからも出来るでしょ!早く来なさーいっ!」

またサクラの怒声か飛んできたので、二人は手を取り合ったまままた飛び上がり、今度はさすがに青ざめたのだが、

「ヤダも〜、サクラったら!それ以上続けたら今度はフォロー出来ないわ〜っ♪」

ころころと笑ういのの声がすぐ追っかけて来たので、サクラの怒りは本気ではないとすぐに知れて、二人は顔を見合わせてくす…と笑いあった。

「ヒナタ…」

嬉しそうにヒナタを見下ろし、ナルトが笑う。

「ナルトくん…」

はにかみながらそれに応えるように微笑んでヒナタが見上げる。

「行こっか!」
「はい…!」

二人は手に手を取って、ようやく皆の待つ場所へと歩き始めた。

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