廿伍 * 泣かないで
「…!…っ……っ…」
「ヒナタ…」
えぐえぐ…と泣くヒナタがとても幼げで可愛くて、泣かせてしまっているのは自分なのにナルトの顔が緩む。
「びっくりした…?…」
「…ぅん…」
ぱちぱちとまばたきをするヒナタを愛しそうに見詰める。
「そっか…ごめんな…驚かせちまって…」
ゆるゆると指先で頬を撫でる。ヒナタがほんのり安心したように眼を伏せた。
「オレもさ…急に気づいちまったから…さ…」
そうっと顔を寄せてヒナタの頭に自分の鼻をくっつけ、
「それなのに、焦っちまって、急かしちまって…ごめんな…」
やさしく囁くと眼を閉じた。
「でもさ…でもさ……誰にも触らせたくねェ…誰のものにもなって欲しくねェ…これってさ…」
声が震える。
「……好きだから…だよな…?」
涙混じりの鼻声。
ヒナタが眼を見開いて、驚きの表情になる。動く気配がしてナルトが手を緩めて見下ろすと、ヒナタが真っ直ぐ見上げている。
「…好き…だから…?」
「うん…!」
泣きそうだけど、本当に嬉しそうな笑顔が降ってきて、やっぱりヒナタは泣きそうになる。
信じて…いいの…?
声にならないヒナタの言葉が、聞こえた気がした。
「だいすき…だっ…てばよ…」
この上なくやさしい声でナルトが囁く。
戸惑いながら、それを受け入れようとするようにヒナタが震える。
「ナルトくん…」
「…長いこと…待たせてごめんな…」
今度は頭を撫でる。
何度も何度も慈しむように。
「オレってば、バカだからさ…ヒナタがさ…居なくなるかも!って思って初めて…イヤだ!とか思うなんて…さ…」
痛みを堪えるようなナルトの表情に、つられて同じ顔をしてしまうヒナタが、心から可愛くて堪らなくて。
「間に合った…か…な……?」
額を寄せて囁く。
「…!…」
「泣かないで…お願い…」
涙で頬に張りつく髪をどけ、そのまま指先でヒナタの髪をすく。
大切なものを注意深く大切に扱うような手つきに、ヒナタが緩む。
「ナルトくん…」
「ん?なに?ヒナタ…」
ヒナタは一度きゅっと目を閉じ、決心したように眼を開くと、真っ直ぐナルトを見上げて震える声で言い切った。
「好きです…ナルトくん…あなたが好き…」
必死な、涙を堪えた、眉間に皺を寄せたままな笑顔。みっともない…ヒナタは思うが、ナルトは安心したように笑顔を咲かせた。
「嬉しい…!ヒナタ!オレもだってばよ…!」
そうして優しくヒナタを抱き締めた。
「やれやれ…」
「やっとか…」
「全く…手がかかるわね!」
「ほ〜んと!」
「…」
皆もほっと息をついた。
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