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廿壱 * 第三の男登場

「うん、美味い」

意外なことにキバは、ざっくりとしているがその実けちのつけようのない作法で飲み終えた。

「団子があっさりしてるから薄めなのがちょうどいいな」

キバの言葉にヒナタが嬉しそうに微笑む。
キバが抹茶を、しかもヒナタのお点前で飲み慣れていることがその作法とヒナタの笑顔がどこか幼げに見える安心しきったものから察せられ、ナルトの眉がつり上がり、ぴりり!とした空気が漂い始めたが、

「ど、どうぞ…」

顔を赤らめて、今までで一番緊張した不安げな様子でヒナタがナルトへお茶をすすめた。
うつ向いてもじもじと袱紗の端をいじっているところが、幼い頃によく見せた指先をつつき合わせる仕草を思い出させて、同期が皆ふっと緩んだ。

…もちろん、盛大に緩んでいるのはナルトで、へらへらとまた変な空気を醸し出したナルトを、サクラといのにつつかれてキバが促した。

「…さっさと飲めよ」
「ん?んあ?!お、おお!そうだな!」

元気よく答えたはいいがどうしたものか。
最後だったのだから皆のを見ていればよかったのに、見ていたようで見ていなかったことを改めて痛感し、ナルトは茶碗を睨み付けながら唸った。
が、観念したように、

「んーじゃあ!いっただっきまー…す…っ」

と手を出したのに。

横からするりと伸びてきた手が、ナルトより早く茶碗を掴むと、優雅な手つきでそれを引き寄せ、凛とした姿勢と見事な仕草でこくりこくりと茶を飲み干した。
最後の一口をこれまたほどよく「ズッ」と音をたてて。

鮮やかな動きに一同が見とれていると、取り上げたときと同じ優雅な仕草で茶碗を持った手を膝に乗せたのは。

「シノぉーーーーーーー!?!?!」

真横のナルトが驚いて飛びすさり、他の者も驚いてのけ反った。

「おま…おま…一体いつの間にィイイイ!!」

白目を向くナルトの問いには答えず、

「…遅い」

シノはイライラした様子で茶碗を膝の前に置いた。

「いつ呼ばれるかと…待ちくたびれていたぞ…」
「はぁ?つーか、そんなん俺らも知んねーっつーの!」
「シ、シノくん、ありがとう!あ、あの…忘れていた訳じゃなくて…ね…?」
「いつまでも身を潜めて待たされる身にもなってみろ…」
「ヘッ!つーか、お得意じゃねーかよ、潜んでんのはよ?」
「キバ…それは違うぞ…何故ならば…」
「シ、シ、シノくん、シノくん、あ、あのね、し、支度…支度は…」

いつもの八班のやり取りなのだろうと察しはつくが、困るヒナタを尻目の二人に、ナルトの怒気が膨れ上がり始めたことにサクラといのはヤバイ!と慌てたが、我愛羅は我愛羅で慎重に成り行きを見守るつもりなのか黙ったまま居るので、自分達でなんとかせねば!とキッ!とナルトを見据えた。しかし、

「さて、ではそろそろよいかな?」

突然ヒアシが現れて、全員が動きを止める。

「…予定外のお客の分もなんとか整ったのでね。ようやく提供出来そうだ」

“予定外”の部分で視線を感じ、ナルトたちは首をすくめた。

ヒアシが視線をやると、その先の衝立の奥から日向の者たちが膳を手にばらばらと現れた。

「きゃあ♪いいんですかぁ♪」
「や〜ん♪嬉しい〜♪」

サクラといのがお互いの両手を組んで黄色い声をあげた。
置かれた膳は、なるほど女性ならば歓声をあげずにおれないだろう、様々な豆皿にひと箸ふた箸ほどの八寸が盛られていた。男子には黒の、女子には赤の艶やかな塗箸。

上座にヒアシが座り、その隣は我愛羅の席で、ヒナタは我愛羅に近い位置に直角に腰を下ろした。サクラやいのがどこに座ったものかときょろきょろしている間に、ナルトはいそいそとヒナタの隣に座り、ニシシ!と嬉しそうに笑いかけた。
笑顔を向けられたヒナタは一瞬嬉しそうな顔をしたが、困ったように首を振りながらうつ向いてしまう。

「おや?そこでいいのかね?うずまきくん」

ヒアシが声をかけたが、

「はい!」

と元気よく返事をしたナルトに、

「バカッ!」

サクラが小声でたしなめた。

「?」

きょとんとするナルトに、愉快そうな顔をしてヒアシが、

「君は次期火影なのだから、本来はあちらだと思うのだが」

と、ヒナタの向かいを掌で示した。

「あ!ここでいいです!つか、ここがいいです!」

満面の笑みで答えられてしまい、我愛羅は呆れ、ヒアシはうつ向いて笑った。

「違うのよ!ナルト!」
「なんだってばよ?サクラちゃん。ヒナタの隣はダメなのかよ?!」
「順列ってもんがあんのよ!」
「いーよ!オレ、そんなの、ぜんっぜん気にしねーし!」

せっかくサクラが小声で教えてくれているのに、全く意を介さないナルトは普通の声で答えてしまい、サクラが益々、恐縮してしまう。

「サクラ…」

シノがそっと寄ってきて退くようにサクラを促した。

「シノ…?」
「下座は我々が座る…だから…」

向かいのいのとキバの間に行くようにと指し示す。

サクラが座についてようやく箸を取り上げた頃にはもうご機嫌なナルトがご機嫌に、

「なァなァ、ヒナタ!これは?これはナニ?」
「これは空豆を炊いたもの…だよ」
「そっかァ!じゃあさ、じゃあさ、これは?」
「それは…独活…の酢の物…かな」
「しゃりしゃりしてて美味いな!」
「お…お野菜は苦手…って聞いたけど…ナルトくん…」
「んー?でも今日は食べれる!ちょびっとずつだからかな?それにどれも美味いし!」
「そう…良かった…」

などとヒナタを独り占めしてはしゃいでいる。
もてなすべきなのは反対側に座っている我愛羅のはずなのでヒナタはそちらをチラチラと気にしてはいるが、それに気づいているのかいないのかナルトはひっきりなしに話しかけてくる。
その光景を無視することに決めたサクラといのは、食べることに集中することにした。

「美味っ…しい…♪」
「お出汁が…染みてて…たまらないわ〜♪」
「ねぇ…毎年こんなの頂いてたの?」
「ああ?まぁな」
「く〜っ!羨ましい〜!」

しかしいかに美味しくとも、八寸だけでは物足りない。逆に食欲に火が付いたようだとナルトやサクラがお腹を撫でた頃、

「では、」

ヒアシが声をかけたので、八班の三人が立ち上がった。日向の女性がそっと我愛羅たちにもハサミを手渡す。

「お好きなだけ、どうぞ」

ヒアシの言葉に、八班の三人は他の皆に靴を履くよう促した。

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