拾参 * 我愛羅の問い
「あ…や……ソ…ソレは……」
ぽかん…としていたナルトの顔が急激に真っ赤に染まった。茂みから見ていた三人は、まるでてっぺんから真っ赤な液体を注ぎ込んだようだったと後に証言したほどだ。
『うそでしょ…』
漏らしたのはいのなのか自分なのか、わからないほどサクラは動揺していた。
いつの間に…?
我愛羅に指摘されて真っ赤になったナルトの表情は初めて見るもので、なんだか知らない他人のように思えて、ふとサクラは淋しくなってきた。
『ナルト…アンタいつの間に…ヒナタのこと…』
泣けるわけではないが、笑うことも無理な気がして、どんな表情をしてよいのかわからず眉を寄せて見守るサクラの視線の先で、
真っ赤になってごにょごにょ言っていたナルトが急にビクン!と竦み上がった。
「んな?!…あっ?…あっ!…うわァあああああ!?!?」
真っ赤になったまま、ザザザ!と後ずさる。
「あっ!…あっ!…いや、あの、が、我愛羅?!?」
「なんだ?」
「おっ、おま、…な、何言って…?!」
「…おかしなことを言ったか?」
「お、お、おかしいだろーッ?!?」
ナルトは真っ赤になったまま目をつぶって顎をあげて喚いた。
「何がおかしい?」
「だってよ、だってよ、我愛羅の言葉聞ーてっと、まるで我愛羅とヒナタとどっちが大事なのかって!そー聞ーてるよーに聞こえるってばよーッ!」
ガタッ。
茂みの三人は一斉に傾いてしまった。緋毛氈の隅っこの衝立も、奥にいったい何人が控えているのかは知らないが明らかに動揺したかのように動いたし、
僅かに顎をあげてしまったヒアシも驚きのあまりか白眼が解けてしまっている。
『あんにゃろーっ!バカじゃないの!?』
『いったいどうしたらそんな話にぃ〜?!』
『ちげーだろーが!』
三人も揃って歯噛みした。
が、我愛羅は実に穏やかな様子で言い返したのだ。
「…だから、そう聞いたのだが」
『えええええーっ!!!』
今度は声にならない叫びが辺り一体にこだました。
実際、固まったナルトとヒナタ以外の全員が心のなかで叫んだに違いない。
がっくりと項垂れたサクラの肩が小刻みに震えだした。が、バッと顔をあげて、
『ヤダもーッ♪なんなのよ、なんなのよ、もうっ♪』
頬を染めながら眼をぎらつかせたので、脇に居たキバといのは反射的に身を引いた。
『ヤダ…サクラったら…腐女子センサーついてんだったわ…』
『なんだ?そりゃ…』
『…あとで説明するわよ…』
『相手が…ナルトってのがイマイチ…嗚呼、でも我愛羅くん…悪くないワネ♪』
ぶつぶつ言うサクラごしに、いのはキバへうんざりした顔で言った。
「お前な!お前な!」
すい、と進んでナルトへ手を伸ばした我愛羅から逃れるようにズリズリと後ずさりながらナルトが喚いた。
「サスケとか我愛羅みてーにキレーな顔したヤツがそゆことゆーと、シャレになんねーんだってばよーッ!」
「…サスケにも言われたことがあるのか?」
「ないないないないないない!!」
「ではなぜそこでサスケが出てくるのだ?」
「ものの例えだってばよ!」
「俺とお前の話をしているのに…他の奴の名前など出すな」
「あああああ!わァった!わァったからーッ!」
緋毛氈の端まで下がったナルトはようやく止まって、ぜいぜいと息を吐いた。
「ナルト…」
我愛羅はその場で上着の裾を整えながら静かに座り直した。
「聞かせてくれ。大事なのはどちらなのだ?俺か?それとも…」
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