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拾 * 侵入成功!

目指すべき藤園は、ヒナタたち日向宗家の邸宅内にあった。ナルトたちは日向の居住地区に侵入したに過ぎず、宗家の邸宅はここからまだ先にあり、改めて周囲を塀で囲まれていた。

「いつもならヒナタの案内だから正面から行くんだけどよ。今日は違うから…」

見取り図の上をキバがなぞった軌道によると、藤園を含む庭園は宗家の敷地内でも居住区寄りの端にあり、宗家の正面門を通らず直接出入り出来るための裏門があるとかで、そこを目指しているのだとわかった。

「今日は…警備してるか…閉門してるか…わからねぇんだが…」

木々の影から宗家の塀が見えはじめるほど近づいた頃、そこで暫く待て、と手で制されて三人は茂みの影に身を潜めた。

「なんか…ホントの任務みたいねっ♪」
「わくわくしてきた〜っ♪」

テンションが上がり始めた女子とは逆に、ナルトは真剣な顔になってぎゅっと身を固くした。

実を言うと、夕べからずっとお腹が痛かった。

薬を飲めばなんとかなる痛みとは違い、みぞおちが奥へねじ込まれて行くような、嫌な痛み。

人の家に黙って侵入するなんてガキの頃のいたずらじゃあるまいし、今さらいい年した自分たちが一体何をやっているんだろうと心底馬鹿馬鹿しいと思う。しかし、キバもサクラもいのも、興味本意の面白半分でやっているのに過ぎないのに、自分だけは…

『ヒナタが…』

水分を多く含む草いきれの中、蒸れて額にも汗がにじむ。

『ヒナタがケッコンして…木の葉から居なくなっちまう…』

二人が仲睦まじそうに寄り添う姿を想像して、ナルトはぞっとした。気味の悪い感覚が背中全体を嫌な感じで撫で去ってゆく。
その感覚を振りほどこうとして思わず首を振ってしまい、静かにして!と女子二人に仕草で注意されてしまった。

初めは『えっ?もう?もう結婚の話とかするの?』という感想しかなかった。

テマリに我愛羅の嫁をと言われても、探すことなんかもちろん、言われたことすらすぐに忘れてしまったくらい、遠い先の、無関係な話としか思わなかった。
それなのに。
サクラやいのがいつまでもきゃあきゃあと楽しそうにしているのと同じく、ヒナタも、赤丸を撫でたり、キバにからかわれたり、何かと無視されるシノを励ましたりして、いつまでものほほんと過ごすのだと思っていた。
それなのに。

ナルトはそっと自分のお腹をさすった。痛みというよりもうただただ不快なだけだった。
きつく目をつぶって気を逸らそうとしたとき、ようやくキバからの合図があり、三人は茂みから抜け出すと続けてそのまま音もなく門を潜った。

とたんに目眩がするような感覚に襲われ、ナルトは丹田に力を込めて倒れないよう踏ん張った。
サクラといのもよろめき、お互いわざとぶつかり合って倒れないよう支えあう。

「すご…」
「うん…酸素が濃い…って感じ…」

結界を無理やり突破したような感覚に似て全神経が警戒して逆立つが、そうではないことは平然としたままのキバを見れは明らかだった。4人の中ではキバ(と赤丸)が突出して感知に優れている。

『ここはもう庭園内だ』

キバが声を出さずに知らせてくれた。

『藤園は…あそこだ』

緑の濃淡が高く低く連なる先に紫色の塊がほの見えた。

変化はしないまま、ナルトは耳を澄ましてみた。庭園とはいえ自然のただ中では、若葉が青の色を濃くするこの時期特有のざわめきに似た独特の気配も感じるが、それでもかすかに人の気配をようやく聞き取ることが出来た。

『…わかる。居る。』
『ああ。オメーが感知モードになんなくてもわかるってことは、さすがの日向サマもちょっとばっかし浮かれてるってこったな』
『浮かれてる?!』
『宴席、だから〜っ?』

女子二人が手を取り合ったところで、キバが前進の指示を出した。

『このまま正面へ突っ込む』
『大丈夫なの?』
『そうよ!虫は…?』
『大丈夫だ』

キバが前を睨んだまま答えた。

『庭園内どこに入っても虫一匹ひっついてきやしねぇよ。シノならそうする』

絶対の信頼の言葉に、サクラもいのも頷いた。

『目指してんのはどこだ?』

ナルトが聞く。キバがようやく振り返り、

『真っ正面だ。ちっと遠いけどよ、どうせ見んなら正面から、だろ!』

ニヤリと笑ったのへ、三人も倣って頷いた。
見取り図を取り出して一点を指す。

『真っすぐここを目指す。俺に続け!』

キバを先頭に、サクラ、いの、ナルトと均等に並んで跳び出した。


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