クナイとカボチャと先生と
「まずは半分だけ、くり貫くぞー」
イルカの号令で生徒たちが一斉にカボチャに取り掛かる。
ナルトとヒナタは生徒たちを手伝ったりアドバイスしようとみんなの中をまわりはじめた。
「ナルトせんせーの握り方のほうが僕はやりやすいなー」
「おっ!そうだろ、そうだろ♪」
先生と呼ばれて照れつつも賛同者が出て喜ぶナルト。
「あら、ヒナタ先生の持ち方のほうが安全だし、きれいに削れるわよ」
女子から言い返されて男子は首をすくめるが、
「やりやすい方でやりゃいいんだってばよ♪」
ナルトがニシシと笑いながらこっそりと囁き、顔を見合わせて笑う。
ヒナタは、ワタが刃に絡まって難儀している子のクナイを綺麗に取り除いてあげたり、アカデミーからの貸し出しのクナイが手の大きさに合わなくても持ちにくそうにしている子に自分のを貸してやったりしながら、
「道具をよく手入れしておくこと、自分の使いやすい大きさを把握しておくこと、そして自分用を持っておくことも大事だよ」
と、細やかに説明することも忘れない。
ナルトの周りには豪快にがしがし作業していく子達が、ヒナタの周りには丁寧にやりたい子やうまくいかなくてまごつく子達が集まって、どちらも楽しそうに作業にいそしんでいる。
イルカは全員の様子をざっと見て、粗くなってくればヒナタのグループに、遅れが目立ってくればナルトのグループに、それぞれ助成を頼むようさりげなく誘導し、2つのグループはほどよく協力しあって作業を進めていく。
「半分くり貫いたら、くり貫いていない方に明り窓用の穴を空けるぞー!」
堅いカボチャの皮を割らないよう上手に穴を空ける練習をするが、これは失敗する子が続出してしまい、
「まぁ本番まではまだ日があるから…別の日にまたやろうな」
と生徒を励まし、今日はこれで終了になった。
生徒たちは各々借りたクナイの手入れを終えて順次帰っていく。
「ナルト先生!ヒナタ先生!さよーなら!」
「おう!お疲れだってばよ!」
「き、気を付けて帰ってね!」
ナルトもヒナタも生徒たちに挨拶を返し、カボチャを抱えてイルカの後に続いた。
イルカからカボチャを調理室に運ぶように言われて行ってみれば、大きな鍋をふかしたスズメがすでにいて、
「ご苦労様、よく洗ってどんどん入れていって頂戴」
と手招きしている。
「…何をするんだってばよ?」
湯気を立てる鍋を覗いて首をかしげるナルト。
「カボチャをペーストにして保管するのよ」
スズメの説明に、ヒナタが顔を輝かせる。
「今日一日では食べきれそうにないなって心配してたんですけど…ペーストにすればいいんですね」
「そうそう、冷凍保存しておいて、当日クッキーにして配ろうかと思ってるんだけど」
「美味しそう♪」
鍋に入りきれなかったカボチャを洗って適度に割っている間、イルカが裏漉し器を2つ持ってくる。
「ふかしたカボチャをこれで潰すぞ。案外力仕事だからな、俺とナルトとでやるぞ」
ひとつをナルトに手渡す。
「裏漉し?」
ナルトが呟いたところで、
「第一弾よろしく!冷めないうちにお願いね」
とスズメがボウルにカボチャをあけた。
「そら!急げ!」
イルカに急かされ、見よう見まねでカボチャを裏漉ししていく。
「皮んとこ堅てェな…」
「ちゃんと潰せよ、でないと滑らかにならないからな」
「へーい…」
裏漉しを終えたカボチャを練って整えていくのはヒナタの役目。ナルトもほどなく手慣れてきて、みるみるうちに大量にあったカボチャが片付いていく。
「今日はどうだった?二人とも」
すっかり片付けも終わりスズメも帰っていった後、イルカがお茶を入れながら二人に聞いた。
「先生って呼ばれんのはなんかくすぐったかったけど、楽しかったってばよ!」
「私も…。でも、ちゃんとお役に立てたのかしら…?」
「ヒナタ、オレなんかよりめちゃくちゃ役に立ってたじゃんよ!」
「そ、そうかなぁ?」
「そーだよ、オレなんか一緒になって遊んでたよーなもんだってばよ。手本にもなんにもなりゃしなかったし」
「でも…まずは楽しんでやるって、とっても大事なことだと思うよ…?」
イルカが尋ねたというのにすっかり二人で会話している様子に、イルカは笑いながらカップを手渡した。
「お前たち、いいコンビだな。二人にお願いして正解だったよ」
「へ?!」
「ええっ?!」
二人同時に声をあげ、顔を見合わせて頬を赤らめてそっぽを向く。イルカはついに声をたてて笑ってしまう。
「どっちも大事なことなんだ」
二人に睨まれながらイルカが説明する。
「正しい方法を知っていてその通り実行出来るように訓練することは大事だ。でも、出来ることが偉いってわけじゃない。正しく出来るならそれにこしたことはないが、それが無理ならどうやれば出来るだろうかと考えて工夫することも、同じくらい大事だろう?」
二人は自分の経験に照らし合わせて考えて、頷く。
「出来ないからってくさらなくてもいいし、出来るからって威張ってはダメだ。ナルトは、正しい方法で出来なくても大丈夫だって教えていたし、ヒナタは、正しい方法を教えつつ出来ない子をバカにしたり威張ったりしないようさりげなく牽制してた。大事なことだよ」
ぽかん…としている二人を見て微笑む。
「お前たちはほんとに、好対照でバランスがいいなぁ。一緒にとお願いして良かったよ」
「そ…かな?」
照れたナルトが頭を掻く。ヒナタは真っ赤になってうつむいている。
「いいコンビだよ」
イルカは飲み終わったカップを持って立ち上がった。
「今日は本当にありがとう、もう帰っていいぞ。収穫祭の日はまたおいで。カボチャ入りのクッキーをお前たちの分も用意しておくよ」
にっこりと笑うと、二人に帰るよう促した。
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