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- ナノ -
クナイとカボチャと先生と

翌朝。たくさんのプレゼントに迎えられて、ナルトの世界で一番幸せな「誕生日の翌日」が始まるはずだった。
朝日を浴びるプレゼントたちは昨日と変わらずキラキラと輝いているのに、ナルトの気持ちはうって変わって暗く沈んでいた。

結局なかなか寝つけなくなるほど悩んだのに答えは出ないまま。それなのに、しかも「気がついたら寝ていた」という事実が更に自分を追い詰める。

ナルトもさすがに、はっきりと返事をしてしまえば今まで通りの仲でいる、なんてことは難しいとわかっていた。
わかっていたからこそ明言しないように保留し続けてきたようなものなのだ。

自分が好きなのはサクラなのだから無理だと伝えれば済むはずなのに…どうしてそれを言うことが出来ないのだろう…。

綱手とシズネからもらったグリーンの鉢のそばにしゃがみ込み、水をやりながらナルトはぼぅっと考え込んだ。

昨日の自分のあの返事は、不本意ながらヒナタに対して「その告白は受け取る気がない」と示してしまったようなものだと、いのから散々釘を刺された。

『ヒナタからはもう二度と触れてこないでしょうね。だからあんたも、どうともする気がないならこれっきりだと腹を括るのね』

いのの言葉が、突き刺さりながら何度も何度も頭の中で繰り返される。

ナルトはうなだれた。

どうして…。
せっかく仲良くなれたのに…。
「二度と近づくな」とか、「これっきりだ」なんていう事態になってしまわなければならないのだろう…。

長いこと自分には、仲間と呼べる間柄はサスケとサクラしか居ないと思っていた。
同年同期としてさまざまにマンセルを組み、本気でぶつかり合い、ただの同期から仲間と呼べるほどの絆がみんなと生まれつつあった間も、
はにかみ屋のヒナタとはなかなか親しくなれずに居た。
それが今ではヒナタとも絆があると言えるまでになったというのに。
サスケやサクラはもちろん、シカマルともキバとも違う、ヒナタでなければダメだと言える絆が確かにあると、言い切れるのに。

どうして…

ナルトは両手で自分の顔を覆った。

暗くなった視界の向こうで、泣き出しそうに眉を寄せて首をわずかにかしげて笑うヒナタの顔が、浮かんでは遠くなって行く…。

『このまま…失うしかないのか?断ち切られてしまうしかないのか?ヒナタを?ヒナタとの絆を?どうして…?』

―――どうするかはあんたが決めるしかないのよ。

再び、いのの声がこだまする。

「決めるしか…」

覆っていた手を寄せて鼻先であわせる。
青々と瑞々しい葉が、朝の風に揺れた。

「ない…」

ナルトは立ち上がり、浴室へと向かった。
声に出してはみたものの、なにをどうすべきかはまだ全く思いつきもしていない。
しかし、しかし、だ。

服を脱ぎ捨てると浴槽に立ちシャワーの栓をひねった。
頭から冷たい水が激しく降りかかる。
徐々に徐々に温度をあげていく水に打たれたまま、ナルトは目を閉じてじっとしていた。

とにかく、よく考えなくては。

休みは昨日一日だけ。今日は任務を受けに行かなくてはならなかった。
早くアカデミーへ向かわなくては。

ナルトは目を開けると、身体を洗うためにタオルと石鹸へと手を伸ばした。





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