疲れてる?!
「おー、ナルトー!こっち頼むー!」
「りょーかいッ!」
「悪りぃ!こっちもお願い出来るかな〜?」
「まァかせとけ、ってばよーーーッッッ!」
多重影分身が、里の中を所狭しと走り回っている。
やっとヒナタに肝心の話を切り出そうとしたのに、祭りの終わりを知らせる太鼓が無情にも響き渡り、泣く泣く別れて来た。
祭りの後始末は忍び全員で取りかかることになっていて、ナルトは屋台の撤収及びゴミの回収、ヒナタは木の葉隠れから出ていく人々の誘導、とそれぞれまるで違う担当だったのだ。
「とっとと終わらせて!ヒナタに話を!する!」
息巻いたナルトが影分身を出したのは当然の成り行きで、その姿を認めた先輩やら同期たちが次々と用事を頼み、瞬く間に影分身の人数が増えていく。
頼まれれば断らない、よく言えばお人好し、悪く言えば安請け合いのお調子者のナルトの影分身のお陰でサボリ魔が多発するかと思えば、そこは心得たしっかり者の同期やイルカがちゃっちゃと摘発してゆく。
実に効率よく後片付けは進んだ。が、
「それじゃあどけるね」
商店街の真ん中の広場に建てられたポールをチョウジが引き抜いてそのままゴミ捨て場に運べばすべて終了のはずだったのに、
「わぁあ♪」
倍化の術が面白くて急に駆け寄ってきた子供たちに、踏み出そうと上げた足の置き場を失ったチョウジがバランスを崩した。
「うわぁあああ!」
「チョウジ!」
「きゃあああ!危ない!」
「早く!倍化の術を解け!」
シカマルの指示で元の大きさに戻ったチョウジはポールをしっかりと抱えたまま倒れて来てしまい、
「危ねェ!」
ポールの先が子供たちや建物にぶつかる!と飛び出したナルトが螺旋丸で砕いて事なきを得た…までは良かったのだが。
ひゅるるるるる…
砕けず残った先端が弧を描いて戻って来たかと思うと、
ガゴン!!!!
「デッ!!!!」
ナルトの脳天に落下し、ナルトは潰れたガマガエルのように地面にべしゃりと倒れ込んでしまった。
「あちゃー…」
「あらら…」
「ご、ごめんよう〜、ナルト〜」
チョウジが身を起こして謝るが、ナルトは完全にのびてしまっていた。
「あれしきで?」
いぶかしがるサクラにシカマルが、
「疲れてたんじゃねぇか?あっちこっちで影分身が駆けずり回ってたしよ。螺旋丸の威力も落ちてたみてーだし」
と、側に落ちているポールを指した。
「ったく…しょうがないわね…」
ふん!と腰に手を当てたサクラは、ひょいとナルトをつまみ上げると、腰の辺りを片手に乗せて目線より高く持ち上げると、
「それじゃアタシ、コイツ送り届けて来ます」
と、すたすたと歩いて行ってしまった。
「サ…クラ…ちゃ…」
その場にいた独身男性のお兄さま方全員が絶句したことも知らず…。
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