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- ナノ -
届けたい…!

「参…った…ヒナタってば…よ…」
「…!…!」
「隠れんの…上手…って…てさ……やっぱソレ…って…」

ナルトの声が上ずっているように聞こえるのは、自分の耳がおかしくなっているからだ。ヒナタは必死に自分に言い聞かせた。どくどくと激しく打つ鼓動ですべての感覚が狂わされていくからだ…。
平静を取り戻すことも、ナルトの腕をほどくために動くことも出来ない。
息も出来なくなってゆく。

ナルトは話すのを止め、ヒナタのそんな様子をつぶさに感じながら、そっ…とヒナタの髪に自分の鼻先を当てた。

仙人モードは自然界の気配や人の悪意だけでなく、心の動きも敏感に感じ取れるとは知らなかった…。

ナルトはヒナタの心を感じ取ろうと眼を閉じた。

ヒナタの気持ちが流れ込んでくる。
混乱…動揺…悲しみ…様々な気持ちが激しく渦巻いている。

『ヒナタ…』

ヒナタを捕らえるために組んでいる自分の手にぎゅっと力を込める。どこも触れていないのにヒナタの身体が強張るのがわかる。

『ヒナタ…』

想いを込めて心へ囁く。ますますざわめくヒナタの心が、悲しいけれど愛しい。

ふっ…とナルトの頬が緩んだ。
愛しい。
嗚呼…そうだ。なんて愛しいのだろう…

このざわめきは自分に対するもの。そう思うと身体の奥からじんわりと暖かくなる。
捕らえているのが自分だから、ヒナタは動揺しているのだ。

『ヒナタは…オレに…反応してる…』

ぎゅっと抱き締めたい。だが、反射的にせよ抵抗されたくなくて、ナルトはじっと堪えてヒナタを感じた。

捕らえられた時伸ばしていたため、今さらナルトの腕の中に戻すわけにもいかず中空に置いたままだったヒナタの右腕を、ナルトは手をほどくと、そっと添わせるように下からゆっくりと自分の右腕を上げた。逃げるように上げられるヒナタの腕に自分の腕が付かないように用心しながら、手の甲をほんのりヒナタの掌に当てた。
その上に乗せるように。
ヒナタが慌てるより先にわずかに持ち上げた後、人差し指を立てて軽く手を握ると、

ふるり…

赤い木の葉がその指先へ風に乗ってやって来た。
そのままナルトの指先でゆるく小さく旋回し続ける木の葉に、ヒナタが眼を見開いた。

「ヘヘ…」

ナルトの声にヒナタは思わず振り向いた。見慣れた得意そうなイタズラ小僧の笑顔。

「オレがさ、風遁使いだって…忘れてただろ…?」
「!」

そうだ。木の葉一枚を自在に動かすなど造作もないはずだったのに、なぜ気づかなかったのか。
そう思いながらヒナタは、くるくると舞う木の葉を操るナルトのチャクラがかなり綿密に繊細に紡がれていることに気づいた。

『私を…気づかれないようにここへ…誘導するために…?』

本物の風にしか思えない、柔らかで自然な動き。
ヒナタはナルトの顔をそっと見上げて、視線で目尻の紅い隈取りをたどった。

『こんなことも…出来るんだ…仙人モードって…』

紅い長羽織を翻して地上に降り立ったナルトの勇姿が脳裏に浮かぶ。

ふわり、と風が変わり、ヒナタが思わず眼で追った先はナルトの手に乗せられた自分の手で、
ゆるゆると寄ってきた赤い木の葉に指を伸ばすと、ヒナタの指先からほんのわずかに離れた位置で留まってくるくると回りだした。

「すごい…」

ヒナタの唇から言葉がこぼれたことにナルトが相好を崩す。

「なんて緻密な…チャクラコントロール…」
「へっへっへ…」

ヒナタの呟きを壊さないようにナルトも声をひそめる。

「お気に召して頂けましたか?ってばよ…お姫さま…」
「お…ひめ…さ…ま…」

ぽう…とヒナタの頬がまた熱くなる。ナルトはますます頬を緩ませる。

『わ…私…』
『…ヒナタ』
『!!!』

込み上げる思いに苦しく詰まってゆく胸に流れ込んでくるナルトの囁き。

たまらず、ヒナタは両手をさっと伸ばすと、回っていた木の葉を両手で挟み込んで捕らえるとそのまま胸の前で組んで握りこんでしまった。そしてぎゅっと眼をつぶってしまう。

その様子をじっと見ていたナルトは、右手の人差し指でちょいちょい、とヒナタの手をつつくと、

「…開けてみて…」

と呟いた。
もうきっと粉々に砕けているのに…泣きそうな気持ちでヒナタがそっと開くと、握られていたのは、

小さな小さな真っ赤なハート。

赤い木の葉を切り抜いて作られたものだった。

「実は…ちっと…幻術も使ってたりなんかして…」

ニシシ、と笑うナルトにヒナタは耐えきれず涙をこぼした。

「ど……し…て…?」
「んー…ん…それはな…」

涙で震えるヒナタを包み込むように抱き締めたナルトは、

「ヒナタに…キモチ…伝えたかったから…だってばよ…」

そっとそっと、囁いた。

「オレさ…上手く言えなくて…そんでさ…」

耳からなのか、心へ直接なのか、

『伝えたいこと…いっぱいあんだ…聞いてくれ…ってばよ…ヒナタ…』

言葉と共に緩やかに流し込まれるチャクラに、ヒナタの心がほどけてゆく。


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