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祭りの夜

「うほー、さみー!」

勢いよく起き上がったはいいが、意外な寒さにナルトはぶるりと身震いをした。そのままするすると服を着込みながら窓の外の景色に思わず声をもらした。

「すげェ…キレー…」

闇の中、とりどりの灯りが人々のざわめきにゆらゆらと揺れている。
音楽や歌も聞こえ、まだ祭りは盛況のようだった。

外を見たまま着替えを終えたナルトは玄関で靴を履こうとして、いつものジャージを着てしまっていたことに気付くと、

「いっけね!」

サンタ服の上下と帽子をひっ掴み、玄関先に置いていた紙袋とを手に外へ出た。

「おほー!思ったより冷えてんなー!」

外套がわりにサンタの上着を羽織る。

もう夜中を過ぎたというのにまだまだ里は賑やかで、あちこちからまだ売り込みの声も聞こえている。時々駆けてゆく子供などもいて、祭りの日だけは夜更かしを許されたことが嬉しかったと同期が口々に言っていたのを思い出して、ナルトも頬を緩ませた。
どこを見ても溢れている笑顔に足取りも軽くなる。
人々をすり抜けて歩くナルトの肩を、とん、と誰かが小突いた。

「おー!キバ!」

ナルトの笑顔に、むっつりとした表情のままキバは黙って手を差し出した。

「?」
「…ねみーんだよ…早く寄越せ」

よくよく見れば、張り切って身に付けてきた毛皮は無惨にむしり尽くされ、キバがどれほど激しく子供たちの相手をしまくったかが伺えてナルトは吹き出した。

「お疲れさん!」

紙袋を手に乗せてやると、キバはいそいそとそれをあけて入っていたジャーキーをひとつ取り出すと早速かじった。

「うわー…うめー…五臓六腑に染み渡るぜー…」
「…いや、マジでほんと…お疲れさんでしたってばよ…」

そんなに疲れていたのかよ…と今度は素直に同情した。ジャーキーをかじるキバを眺めているナルトに、

「そーだ、あっちでイルカ先生がコロッケ揚げてたぜ」

と唐突に告げた。

「は?!イルカ先生が?!コロッケ?しかもなんでこんな時間に?!」
「しんねーよ」

キバはナルトに見向きもせず紙袋に手を突っ込んで次の欠片を取り出した。

「あー…でも、顔見なきゃ寝れねーとかなんとかぶつぶつ文句言ってたな…」
「…誰の?」
「俺が知るかよ!」

くちゃくちゃと次を頬張りながら答える。

「ま、とにかく受け取ったし、ありがとな」

キバは紙袋をかざすとナルトに背を向けた。が、振り返り、

「揚げたてコロッケとか持ってってやったら喜ぶんじゃね?」

そう言ってニヤリと笑い、去っていった。



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