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- ナノ -
南瓜灯篭行列

そうしているうちに空がオレンジ色に染まり始めた。
日が暮れたらすでにあちこちに吊るしてある提灯に火を点すのだが、その前に。

「おおーい!来るぞ〜!」
「道を開けて下さ〜い」

遠くから声がかかり、避けながら何事かと振り返ってみれば、
様々な南瓜灯篭を持った子供たちの行列がやって来た。

「すごーい!可愛いー!」

自分達の頭よりも大きなカボチャをくり貫いて作ったランタンを手に、きゃあきゃあとはしゃぎながらやって来る彼らは未来の忍びの玉子たちで、これも自分達の手作りのマントや仮面などを身に付けている。
沿道からの「トリック オア トリート!」の掛け声に、それぞれポーズをとってみせたり、自分達の技を少し見せたりして、その度ごとに引率で付き添っていたイルカは苦笑した。

『見せるだけでなく魅せる…という意味では訓練の一貫…に、なる?か?なぁ?!』

どこまでいっても教師目線な自分にも笑ってしまう。

「イ、イルカ先生…!」
「イルカせんせーッ!」

沿道のあちらとこちらから声が掛かった。先に行ったのはヒナタで、気づかず被せてしまったのはナルト。
イルカは声を掛けてくれた順に手を振った。驚いて見つめあっていた二人も慌ててこちらへ笑顔で振り返してくれたので、イルカはこっそりと肩をすくめて笑う。

『まるで俺が邪魔してしまったようじゃないか』

照れ隠しのようにやたら手を振るナルトと、いつもより更に困ったように首を左右に傾げるヒナタ、それぞれに、

「あとで来いよ、約束のものがあるからな!」

そう声をかけてイルカはまたアカデミーの生徒たちを追った。

二人で揃って…来るだろうか…?

『来るかも…な』

イルカはまたひっそり笑った。
カボチャを使った授業の時よりも、更に切なげだった調理室でのナルトの視線。ヒナタのことを気遣って、ヒナタのことを気にしていた。
あの視線に、ヒナタが気づいていないはずがない。

『手を…つないでいると…いいなぁ…』

イルカは暗くなり始めた空を仰いで思った。先頭の南瓜灯篭の灯りがもううっすらと滲んで、夜闇に溶けかかっている。

かつて共に並んでつないで歩いた、何も持ち得られぬと泣いていたあの手は、儚く小さく引っ張りあげるほど低い位置にあったのに、今では肩も自分を過ぎ、様々な任務や経験を経て厚く大きく逞しくなっているだろう。

望めば掴めぬものなど恐らくないほど頼もしく成長したであろう、その手で。

『今度は…自分から…手を伸ばすんだぞ…ナルト…!』

わずかに細めたイルカの視界の中で、すべての灯篭の灯りがぼんやりと滲んだ。


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