Ann Happy Birthday
「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
いのの長く深いため息が響き渡る。
ナルトはうつむいた頭をますますちゃぶ台にめり込ませた。
やってきたいのに、天の助けとばかりにすがるようにしてヒナタの様子とやりとりとを一気に説明しながら…ナルトは、自分が何をやらかしてしまったかすっかり理解してしまっていた。
ヒナタが自分を異性として好きなのだということは知っていた。それを嬉しく思いつつもなかなか返事が出来ないことを気にかけてはいたのだが、
どう返事すべきか悩んでいたのも事実。
結局はサスケのことや、大戦で奔走していた、復興活動で忙しかった、等という名目で、伸ばし伸ばしになって…
いや。
していた、のだ。
他ならぬ、自分が。
それなのに…
避けてきたはずの返事を、うっかり返してしまったのだ。
うかつにも、よく考えもせず。さらに酷いことに、勢いのまま。
ナルトは深く深くうなだれた。
「で?」
話し終えるまではと手をつけずにいたためすっかり覚めてしまったお茶にようやく口をつけながら、いのが冷たく促した。
「えっ?」
「だから、決めたの?決めてるの?」
「な、何を…」
「トーゼン。ヒナタへの返事よ?」
「そ…それは…ま…だ………」
「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
さっきよりも更に更に長く深いため息が響く。
「サ・イ・テー!」
ちゃぶ台から転げ落ちた頭が、そのまま床へと激突する。
「問・題・外!!」
「うが…」
めりめりめり…と半分くらい埋まっただろうか。逆さまになっているため、流れ落ちる涙と鼻水が額を濡らす。
「で?」
かちゃん、と音を立ててカップを置いたいのがナルトを助け起こす。
「へ?」
色んな水分でぐちゃぐちゃになった間抜け面を晒して間の抜けた返事を漏らすナルトに、顔をしかめながらいのがティッシュを渡してくれる。
「どーすんのよ!結局!」
ぶほぉ!とティッシュに盛大に吹き出したあと、さめざめと顔を埋めるが…
ちゃぶ台に頬杖をついたいのはじっと眺めるだけで何も言ってくれない。
「どうするかはあんたが決めるしかないのよ」
いのの静かな声が突き刺さる。
「ひとつだけ言っとく」
ちゃぶ台に手をついて立ち上がる気配を感じて、ナルトは顔をあげた。
「結局、仲間としての意識しかないってんなら、もうこれ以上はヒナタに何も言わずにいるべきね。接触自体しばらく禁・止!」
仁王立ちになって冷たくナルトを見下ろす。
「そんな…それじゃ…このままってこと?…それは…」
戸惑うナルトに、
「ふる、ってそういうことよ。ふっといて今まで通りの仲で…なんて本気で思ってたんだとしたら、あんた正真正銘の救いようのないバ・カ!ってことよ!!」
バタン!!と激しい音を立てて閉まった玄関扉に鼻先を酷く叩かれたような気持ちになって、ナルトは茫然と固まるしかなかった。
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