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「#幼馴染」のBL小説を読む
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- ナノ -
もう大丈夫!

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「よし、もうだいぶいいわね」

最後に喉の診察をしたサクラがそう言うと、ナルトは得意そうにニシシ!と笑った。

「あのさ、そんならもうお粥じゃなくてさ、」
「何言ってんのよ、好きに食べていいのは退院してからよ。入院中は出されたものを黙って食べてなさい」

皆まで言わせずすげなく言われて、ナルトが大袈裟に肩を落としたところへ、

「よお」

開けたままだった戸を叩きながら声をかけたのはシカマルだった。横にはキバも居て、よく見れば後ろにチョウジとそしてきっとシノも居るのに違いない。

「おお!」

ナルトが嬉しそうに手をあげた。
それを合図にどやどやと病室に入ってくる男子に場を譲るように、サクラはベッドから離れた。

「もう退院なんだって?悪かったなぁ、見舞いに来れなくてよぉ」

そう言って誰より先に寄って来るキバに、ナルトはすぐ軽く睨んで警戒したが、キバの表情が本当に残念そうだったのを見てふっと緩みそうになったその時、

「夜中どころか真っ昼間でもしょんべんチビりそうな恐い話をたっくさん用意してたのによ!」

キバは心底嬉しそうに笑いながらベッドに腰掛け、馴れ馴れしくナルトの肩に手を回した。

「ほんと残念だったぜ〜。『病院の怪談』てやつ?とっときのがたくさんあったのによ〜」

得々と続けるキバの手をナルトは躍起になって引き剥がそうとした。

「おま…!いーかげんにしろよ!」
「そーだ!退院するけど一応聞いとく?すげーんだぜー♪」
「い・ら・ね!っつの!」
「遠慮すんなって♪」

嫌がるナルトに無理矢理話を聞かせようとする。

「んじゃさ、軽めのやつからいっとくか?病院てさ、あんま使われてない病室ってあんじゃん?」
「だーっ!ヤメロー!聞きたくねェー!」
「まぁまぁ聞けよ♪んでよー♪」
「わーっ!わーっ!わーーーっ!」

聞きたくないのにキバが離してくれないので耳を塞いで喚くナルトに、どうしても聞かせようとキバが声を張り上げたところで、

「二人とも!いーかげんにしなさーい!ここは病院よ!場所をわきまえなさいっ!!」

サクラが雷を落とした。

たちまちシュンと首をすくめた二人だったが、

「よりによって『病院の怪談』だなんて!失礼なっ!」

ぷりぷりと怒るサクラの言葉に、 キバはそっぽを向いて『ケッ』と呟いた。

「ま、とにかくデカイ声が出せるほど回復したってんなら安心したぜ」

シカマルが声をかけたのへ、ナルトがニシシと笑って応えた。肩を組んだままのキバは二人のやり取りをが面白くなかったのか、

「なぁ恐い話しよーぜー」

とまた食い下がる。さすがにチョウジが、

「やめなよ、嫌がってんじゃん。寝れなくなっちゃうの、ボクもやだよー」

となだめるが、キバが構わず嬉しそうに続けようとするので、

「キバ…もしかして…自分がハナさんにされたことを、ナルトにやってやろうとしてない?」

チョウジが穏やかにずばりと切り込んだ。キバはひくっと一瞬顔をひきつらせるが、

「ん、んなわけねーよ!」

とムキになる。

「キバだってやだったんだろ?ベッドで一人で寝なきゃなんないのに、怖かっただろ?」
「んなことねーよ、オレはいっつも赤丸と寝てたしさ!」

ヘッ!とキバが得意そうになったところへ、ずい、とシノが進み出た。

「キバ…お前は今、いつも赤丸が一緒だったから怖くなかったと言ったな…」
「まーな♪赤丸とオレはいつも一緒だしな!」
「それが本当に赤丸だったという保証はあるのか?」

一瞬、シノの言わんとすることがわからず皆ぽかんとするが、じわじわと、まさか…という空気になり始めた。

「…ナルトの影分身…オレの蟲分身…風影の我愛羅の砂分身…見破られにくい巧妙な分身の術はいくつもあるが…」

さりげなく自分の術も入れやがったぜ…とキバが眉をひそめる。

「世の中にはさらに高度な分身の術があるのかもしれない…」

ずい、と更に進み出たシノは、すい、とキバを指差し、

「果たして…その時の赤丸が本当に本物の赤丸だったと…お前に言いきれるのか…?」

ヒヤリ…部屋中が凍りついた。

「巧妙な分身とすり替えられていて、幼いお前はそれに気づかず、本物の赤丸と信じきって頼ってすがり付いていたのかもしれ…」
「ぎゃーーーーーー!!!」
「んなわけねー!んなわけねーよーーー!やめろぉーーー!」

ナルトとキバが同時に叫んでパニックになった。チョウジも青ざめ、シカマルも思わずぶるりと身震いした。

「んなはずねー!」
「ぎゃー!ぎゃー!ぎゃー!恐ェエエエエ!!」

どがん!!

突然凄まじい音がして、ふわ…と細かな砂煙が舞い上がった。一瞬で静まり返った一堂がはっと見ると発信源はサクラで戸口脇の壁一枚の一面に細かなヒビが走っており、当のサクラは額に青筋を立てて思いきり歯を喰い縛りながら、

「びょ・う・い・ん!よ!!」

ガツ!ガツ!ガツ!ガツ!ガツ!!

と壁の隣の戸を叩いて注意した。
本来ならば力任せにぶん殴っていただろうに場所が場所だから堪えてくれたであろう、その分が全部向かったかのような鬼も竦み上がる形相をしている。

『ハイ…』
『スミマセン…』

二人は声も出せぬまま口だけパクパクと動かして謝り、チョウジは何も悪くないのにナルトやキバにすがり付いて震え上がり、シノはその場でフリーズ、シカマルはひっそりと息を漏らして成り行きを見守った。

「ったく!」

すぐに普段のただの呆れ顔でふん!と鼻を鳴らしたので、男共はようやくほっ…と息を吐いた。

「…叫べるのならもう退院間近だな、ナルト」

シカマルの言葉にぱぁっと顔を輝かせたナルトの顔を見て、皆が一斉にサクラを期待の眼差しで見詰めた。

「……」

サクラは思案顔で黙っていたが、退院の日取りの発表を待っているであろう男共の顔をじろり…と見ると、

「…アンタたち、また集まって騒ぎ立てんでしょうから…言うのやめとこ!」

つん!と言い放ったので、

「ええーーーっ!!」

これにはさすがにシカマルも加わって全員で抗議の声をあげたのだった。

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