お見舞いの花束
次に目を開けた時はどうやら夜で、寝たふりのつもりが本当に寝てしまっていたらしいと知ってナルトは驚いた。
寝起きだからか暗闇のほうが目が馴れるのも早いんだな…そう思った瞬間、
ふと…
何かが気になって首を巡らせると、厚いカーテンがひかれた窓辺に置かれたままだった花瓶に、花が活けられているのを見つけた。
とりどりの色と種類。
突如一角を占めた極彩色を、ナルトは様子を伺うように静かに眺めていたが、ゆるりと頬を緩め、
『……なんか…なんかオレら同期みてェだな…!』
ふひ…と笑ってから気がついた。
これ、ほんとにお見舞いの花束なんだ!
飛び起きたかったが出来ず、ぐんにゃりとまたベッドにのびてしまう。
忍なのにというショックと悔しさで歯を食い縛るが、まだ復調していないのだから仕方がない。観念してそのまま身体を捻って花瓶の花を眺めた。
まとまりがないようでまとまっていて、全部が違う花なのに不思議に調和していた。
誰の提案でこんな花束にしたんだろう。ナルトはわくわくと思いを廻らせた。
いの一人でならもっとスタイリッシュにまとめていただろう。サクラは忙しくて選択には加わっていないに違いない。チョウジが選んだのかな?案外シカマルも得意なんだったりして…
久しぶりに弾んだ気持ちになって、ナルトは嬉しくてまた泣いた。
もういい。誰も見てない。構いやしない。
具合が悪いんだもの、泣いてたっていいじゃないか。
そう開き直って、花を眺めてあれこれと楽しんだ。
どの花が誰みたいだろうかとか、どの色が誰みたいだろうかとか、
自分ならどれだろうとか、
とりとめもなく色々考えた。
首を傾げて花全体を眺める。
茎と葉との隙間も面白い。
でも…もうちょっと、こう…活け方があるような…
そう考えてナルトは声を出さずに、あはは、と笑った。
きっとサクラが活けたのだろう、常々彼女はこういうことは苦手だと言っていた。どうバランスをとったらいいのかわからないのらしい。
『…花束で完結してるんだから、束ねたまま活けちゃダメ?』
と言ってしまって、いのにこってりと叱られたことがあったと言っていた。
最初にもらった花束は、驚くほどあっけなく枯れた。
回診に来るサクラに花瓶の水替えを頼むのは気が引けた。だが、頼んでもきっと困惑しただろう、
『だから、どう活けたらいいのかわかんないんだったら!』
ナルトは今まさにサクラがそこでそう言ったかのようまた笑った。
笑って、
そして。
『もう寝よう…』
くるり、と身体の向きを変えて掛け布団を引っ張りあげて頭から被った。
これ以上はダメだ。
もう考えるのをやめにしなきゃ、きっとまたグシャグシャになっちまう。
きっと…
また…
ぎゅっとぎゅっと目をつぶって、
ナルトは何かから逃げるように早く眠りの闇へ落ちようと眠る努力を始めた。
眠ろう…眠ろう…眠ろう…
寝なければ…
そう唱えながら。
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