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山盛りカボチャコロッケ

スズメが茹で、いのが茹で上がりを運び、ナルトとチョウジが潰す。それをヒナタが味付けをし、イルカが形を整えて並べていく。
スズメといのは自分たちの分担が終わると器具を片付けイルカを手伝っていたが、ナルトとチョウジは衣付けを手伝った。

「揚げるのは我々でやろうか」

スズメの指示でヒナタといのが菜箸を動かしてコロッケを挙げていく。

「危ないから離れてなさい」

と何度も言うのに、お腹がぺこぺこなナルトとチョウジは鍋から離れられず、揚げたてのコロッケの匂いに鼻をひくひくさせている。

「きゃっ!」

パチッ!と油がはぜてヒナタが叫んで身をすくませたその瞬間、ナルトが立ち上がりヒナタの手をつかむと蛇口をひねって流れる水の下に差し込み、

「大丈夫か?」

と聞いた。
ヒナタはびっくりしてナルトを見たまま固まっていたが、

「あ…あの…びっくりしただけで…どこにも飛んでない…から…」

おずおずと言いにくそうに告げた。

「へ?!」

間抜けな声を出したナルトを見てイルカもチョウジも笑っている。

「飛んだとしてもちっちゃなしぶき程度だよ、揚げ物をしてるときはよくあることだよ」

チョウジがのんびりと声をかけ、

「でもまぁ用心にはこしたことないな」

イルカが優しく声をかける。

「あ…そ…そなの…」

真っ赤になって目を泳がすナルトがまだヒナタの手を握ったままなので、いのが柳眉を逆立てた。

「ちょっと!気が済んだんならヒナタを返して頂戴!」

たまらずイルカとチョウジがどっと笑った。
赤くなったまま元の位置に戻って拗ねたようにそっぽを向くナルトをちらりと見て、いのが、

「まぁどちらかと言うと手より顔に飛ぶことが多いけどね」

と言うと今度は、

「マジか?!」

と立ち上がってヒナタの頬を撫でた。
ついにヒナタは菜箸を取り落としてしまい、とうとういのが雷を落とした。

「いーから!隅っこでじっとしてなさーい!!」

調理室の隅っこでひとり膝を抱えてみんなの様子を見ていると、ぎこちなかったヒナタもようやく笑うようになり、ナルトはなんとなくほっとして笑顔になった。
とても楽しそうな雰囲気のなか、コロッケの山がどんどん出来ていく。
笑ったままナルトが、こてん、と膝に頬をつけたとき、

「おおーい!完成間近だよー!おいで!」

とイルカが手招きをしてくれた。
びょこ!と首を伸ばすと、スズメもチョウジもいのもヒナタも…笑っている。

「待ってましたァーっ!」

ナルトは元気よく立ち上がると一足跳びにみんなのところへ駆け寄った。

「火傷しないように気をつけて」

破裂してしまって別に避けてあった失敗作のコロッケをみんなで頬張る。

「アチチ!」
「言わんこっちゃない!」
「ふわわ…あつ…あつっ…」
「んま!んまーい!」

ほふほふ、はふはふと頬張る元・教え子たちに、イルカもスズメも目を細めた。

きれいに揚がった大量のコロッケを箱に詰めると、イルカとスズメは頷きあい、イルカが代表して、

「ほら、持って帰りなさい」

チョウジにも差し出した。

「ナルトは手伝って運んであげてね」

入りきれず二つに別れた箱のもうひとつを指してスズメが言った。

「…どう…して…?」

箱を抱えたまま固まっているチョウジに、イルカはにこっと笑いかけると、

「お前一人にじゃーないぞ、秋道一族に、だ」

チョウジの頭を撫でる代わりにひとつ頷いた。

「…火影さまのご配慮だ」

言葉少なに静かにそう告げる。
チョウジは立ったまま涙を流した。

「先生…ありがとう…嬉しい…」
「たくさんの感謝の声が届いていると聞いているよ」

スズメも声をかけた。
もらい泣きをしていたナルトは盛大に鼻を啜ると、

「いようっし!チョウジ!あったけェうちに運ぶぜ!行こう!」

箱を頭の上に掲げて歩き出した。

「ありがとう…先生…」
「行こう!チョウジ、ありがとうございました!」
「あ、ありがとうございました…っ!」

動けずにいるチョウジを促し、いのとヒナタも出ていった。

「全く…あいつら…」

イルカは頭を掻きながら苦笑いをした。

「大人になったんだか、ガキのままなんだか…よくわかりませんよ」

それでもなんだか嬉しそうなイルカを見て、スズメも笑っていた。


**************

張り切ってアカデミーの門を出たところで、急いで走り込んできたサクラとかち合った。

「アラやだ、終わっちゃったの?!」
「サクラちゃん!」

息を切らすサクラに、ナルトが嬉しそうに声をかけた。

「へっへっへー♪コロッケ作ったんだぜ〜、みんなで!」
「知ってるわよ、そんなこと。呼ばれてたんだもの、アタシも」

嬉しそうなナルトをすげなくあしらうと、いのの方を向き、

「ごめんね、間に合わなくって」

と詫びた。

「心配ご無用よ〜、それどころか来なくて正解だったかも?お陰でとっても美味しく出来ました〜♪」
「どぉいう意味よ!ソレ!」

すぐさまいのとの丁々発止が始まった。

「アンタが料理上手だなんて話、聞いたことないもの〜」
「それはアンタも同じでしょ!」
「たけどさ!サクラちゃん、あのさ!」
「とぉっても美味しく出来たの♪アンタが間に合わなかったお陰ね〜」
「だ・か・ら!アタシだって!」
「オレも!オレも手伝ったし!」

ナルトがなんとか話しかけようとするがサクラは見向きもしない。

「男子よりはいい働きしたはずよ!」
「どぉ〜だかねぇ〜♪」
「サクラちゃん…」

しょんぼりとするナルトを見て、ヒナタは耐えられなくなってしまった。

「サクラさん!」

ヒナタの滅多にない大声に、サクラだけでなくいのもチョウジも、ナルトまでが驚いた。

「サクラさん、あのね…ナルトくんね…ナルトくんもチョウジくんも本当によく手伝ってくれたの…だ、だから…だから…」

注目されていることに恥ずかしくなって真っ赤になってうつ向いてしまうが、ヒナタはそこできっ、と顔をあげると、

「だから、褒めてあげて、サクラさん。ナルトくんはサクラさんに褒めて欲しいの。わかってあげて」

と、きっぱりと言い切った。

「う…」

ヒナタに気圧されて動けないサクラに、いのが静かに、

「そうね…。とりあえずアンタは間に合わなかった。ナルトは来てくれて手伝ってくれた。『代わりにありがとう』くらいは言ってもバチは当たらないと思うわよ」

言った。

「ナルト…」

サクラの声に、ナルトは顔をあげてそちらを見た。

「ありがと…。コロッケ…手伝うなんて…すごいね」

ぎこちないがサクラが笑ってそう言ってくれたことにナルトは破顔した。

「いや…なに…へへへ♪」

嬉しそうなナルトを見て、嬉しそうにしているヒナタに、いのはたまらなくなってそっと瞬きを繰り返した。

『ヒナタ…アンタって子は…』

いのは誰にも気づかれないように小さく頭を振ると、

「さ!冷めないうちに運びましょ!」

仕切り直し、一行は出発した。
隣に並んだサクラに嬉しそうに一部始終を話して聞かせるナルトを先頭にして…。






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