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山盛りカボチャコロッケ

鍋を覗きこみながら楽しげに話すスズメとヒナタの後ろから放たれている鋭い視線に、向けられた先のナルトだけでなく並んでいるイルカもチョウジも思わず竦み上がるが、
いのはすぐにいつものようににこりと笑ってこちらへ軽やかに駆けて来ながら、

「イルカ先生〜♪お買い物、ありがとうございます〜」

とイルカの前に来ると素早く買い物袋を取り上げ、チョウジに、

「お疲れさま!」

と笑いかけ、ナルトには、

「手伝って♪」

と荷物を分けて持たせつつ、どか!と肩をぶつけてき、

「アンタ…覚えてるわよね…」

ナルトにしか見えない角度から睨みあげながら凄んだ。

「あったりめーだろ!今朝の今朝だぜ!いくらなんでもそこまでバカじゃねーよ!」

こそこそと言い返すナルトをじろりと見上げ、

「どーだか」

低く唸ると、

「あー!もう!なんでアンタまでついてくんのよ!」

とイライラと歯噛みした。

二人の様子に内緒話でもしているのか?とイルカが不審がるより一瞬早く、いのは身を翻すと明るい声を出して、

「材料が揃ったわよ〜!始めましょ♪」

と、荷物を抱えて先に立って調理台へ向かいながらスズメとヒナタに声をかけた。
いのの声にようやく顔をあげたヒナタは、ナルトを見つけてほんの少し驚いた顔をして、またうつ向いてしまった。ナルトは一瞬だけ淋しそうな顔をしたがすぐに明るい声で、

「今日は何したらいいんだってばよ?」

腕まくりをしながらイルカとスズメを交互に見た。

「何でも手伝うよ〜」

とチョウジも請け合う。

「あ〜〜〜…でも〜…イルカ先生〜、この二人、土木工事の帰りなんですよね〜」

いのが調理台の向こうから恨めしげに言う。

「手をキレイに洗えば問題ねェだろ!?」
「ボクら、お手伝い出来ることあるんですよね?!」

慌てて訴える二人を見てイルカが微笑む。

「大丈夫、こんなこともあろうかと思ってね」

イルカは抱えてきた袋のひとつに手を突っ込むと、

「さ、念入りに、袖をめくって肘まで洗ったらこれを着なさい」

折り畳まれた白い衣類を二人に差し出した。


「…ナルトはともかく…チョウジのサイズなんてよく見つけましたねぇ〜」

感心したいのが、割烹着を着た二人を上から下まで見回した。
スズメは笑いを噛み殺しているし、ヒナタは目を白黒させている。
ナルトもチョウジも、真っ白な割烹着で膝まで包まれ居心地悪そうに立っている。

「ゴムんとこちょっちキツいな」

ナルトが袖口をずりあげようとすると、

「ジャージの袖が出ないように気を付けて」

と、スズメからぴしりと注意が飛ぶ。

「じゃあ始めようか!どんどん行くぞー!」

イルカが張り切って号令をかけた。

茹で上がったカボチャを鍋からあけるのはいのの役目。それをナルトとチョウジそれぞれの前におかれたボウルに放り込むと、二人は早速手にした麺棒で潰し始めた。

「今日は裏ごしじゃねェんだ…」

ナルトは呟くと、そっとヒナタを見た。ペースト作りをしたときのように…ヒナタ、笑ってくれないかな…
だが、ヒナタはナルトを見ることもなく黙々と自分の作業に没頭していた。

「今日はペーストじゃなくてコロッケだから、滑らかにならなくてもいいんだよ」
「コロッケ!?」
「カボチャコロッケ!!」

ナルトとチョウジが目を輝かせたので、スズメとイルカは吹き出してしまった。

「カボチャコロッケの揚げたてなんて初めてだよ〜ボク」

チョウジが嬉しそうに言うと、

「オレってば、カボチャコロッケ自体初めてだっつーの!」

ナルトも浮かれて言葉を返す。

「ハイハイ、どんどん行くわよ!」

いのが次のカボチャを抱えて急かした。

「え?こんなんでいいの?」
「あんまり滑らかじゃないほうが美味しいよ〜?」
「潰し終えたらこっちにおくれ」

イルカが声をかけたのでそちらを向くと、イルカがヒナタと大きな鍋の前に立っていて、鍋の中を指差していた。

「ほいよー!」

ナルトが嬉しそうに大きな声をかけながらチョウジの分も鍋にあけ、ヒナタをちらりと見るが、ヒナタはうつ向いたまま顔をあげない。

「早く!次!」

ほかほかの茹でたてのカボチャが入ったザルをかざしていのが呼んだので、ナルトは慌てて駆け戻った。

「どんどんお願いよ」
「わあってるってばよ」

笑ってはいるが、ナルトがヒナタの様子を気にしていることはいのにはすぐにわかった。こっそりとひとつため息をつき、

「今は作業に集中して」

ナルトにそっと囁いた。
驚いていのを見つめてしまったナルトだが、すぐにニカッと微笑むと、

「おーよ!」

と明るく笑った。

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