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- ナノ -
◆ Trick or Treat ◆

「trick or treat!」

「はぁ?!」

目の前の女子三人にいきなり言われて、ぽかんとアホ面を晒したナルトに呆れるいの、顔を赤くしてうつ向くヒナタ、に続いて、

「『はぁ?!』じゃないっ!」

ボカッ!!とぶん殴るサクラ。

「いって〜…」

みるみる膨らむたんこぶを撫でながら涙を流すナルトを、ひきつった顔で眺めるキバ、シカマル。

「説明、聞いてなかったの?!」
「きーてたけど、ソノ、とりっく?ナントカって何なんだよ?!」
「だ、か、ら!」

ぎゃあぎゃあと言い合いを始めた二人をよそに、

「それ…俺らも着んの…」

顔をひきつらせたまま唸るシカマル。

「そおよ〜♪どれを着るかは早いもの勝・ち♪」

いのが明るく笑う。

よその国の祭りとかいう『ハロウィン』という行事を、木の葉でも10月末にやろうという計画。アカデミーに通う子達が中心だが、協力してくれないかと、これは綱手経由でイルカがお願いしてきたらしい。

「なんで俺らが…」
「んー?チョウジは警護班で、リーさんとテンテンさんはアカデミーの生徒さんたちの引率、シノは…シノは?!」

思わずヒナタを振り向くと、

「あ、あの、たぶんね、たぶん…油女一族でなにか…やるんじゃないの…かな…?」

おろおろとしているさまにキバがため息をつき、

「依頼漏れ…か…またしばらくめんどくせーなー」

ばりばりと頭をかく。

「うううん、違うよ!ほんとに…ほんとに、たぶん油女一族でね…」
「わあったわあった、サンキューな、ヒナタ」

はいはいとあしらって、目の前に並べられた衣装をざっと混ぜて、

「俺、これがいい!」

キバが持ち上げたのは、狼の着ぐるみ。

「えっ…」
「ふつーじゃん…」
「面白くもなんともねー…」

すぐさま三人から突っ込まれ、

「なんでだよ!」

と喚いたが、

「犬塚一族が狼やるって捻りもなんにもないじゃないの!」

いのが着ぐるみを取り上げ、

「んー…じゃ、これシカマルがやったら?」

と押し付けた。

「はぁ?!俺が?」
「そのほうが意外じゃない!」

そう言ってころころと笑ういのは、ふわふわした生地で作られた猫の衣装。生地はふわふわだが肩と腕とウエストと太股とを大胆に露出して、なかなかセクシーだ。
紫色の濃淡の縞々で、「物語に出てくる不思議な猫なんだって」と言いながらしっぽをつかんでゆらゆら揺らしている。

「残りは?」
「吸血鬼と悪魔、かな…」
「じゃ!悪魔!」

またいのがそう宣言してキバに悪魔の衣装を押し付けた。

「だから!なんで?!」

選ばせてもらえないことにさすがにキバが激しく抗議するが、

「悪魔の衣装は黒一色だから、ナルトには似合わないんじゃない?キバならばっちりよ♪」

褒めてもらえてすぐに機嫌を直したキバは、

「そんじゃ着替えて来るぜ♪」

と部屋を出ていった。

「ったく…てこずらせやがって…」

ぼこぼこにやられて顔が原型をとどめていないナルトを引きずりながらサクラがようやくやって来た。

「あら?シカマルが狼なの?」
「面白そうでしょ?」
「んじゃ、悪魔は?」
「キバよ?」
「うそー!」
「……ナルトにさせたかったの?あんだけしといて?」
「いや…そういうわけじゃ…」

床にのびているナルトを親指で指すいのに、さすがにやり過ぎたか?ともじもじとスカートの裾を握って言いよどんだサクラは、ミニスカートに短パンの悪魔の衣装。
長手袋にニーハイを履いて露出は控えめだが、黒一色でコンパクトな衣装は、サクラのスレンダーな体型とカラフルな髪と目の色を引き立たせていてなかなか似合っている。

「悪魔…まんますぎ…」

床に転がったまま唸るナルトに、

「はぁあああ?!まだやるかぁ?!」

眉を釣り上げ振り返る形相はまさに悪魔。
こらこら、といのがサクラの肩に手を置いたところで着替えを終えたキバが出てきた。

「サイズばっちりだぜ!」
「ほら〜!映えるじゃな〜い♪」
「あら!ホント!」
「だろ?」

身体が起こせず楽しそうな仲間に入れなくて、せめて首だけでもと必死にそちらへ向けようとするナルトの頬に、冷たいものが触れた。

「だ、大丈夫?ナルトくん…」
「ヒナタ…」

手拭いを濡らしてきてくれたらしい。そのまま腫れた顔に丁寧に当ててくれるのを目を細めて受ける。

「きもちいー…」
「良かった…」

はにかんで微笑むヒナタはと言えば、膨らんだ袖の衣装を着ているのだが…しゃがんでいるためなのかどうか、やたら…やたら…

『む…胸…でけェ…んだな…』

ナルトはこっそり生唾を飲み込んだ。

肩を借りてようやく身体を起こしてよく見ると、やたら胸を強調した衣装を着ているのだ。
袖と身頃とスカートは黒なのになぜか胸元の生地だけが薄い藤色で、きゅっと絞ったウエストと広がったスカートの黒が沈み、淡い色調の藤色の生地部分がただでさえ飛び出して見えてしまう。

「あ、ありがと…」

お礼を言いたいのだがそちらを見ることが出来ず、ナルトは目をそらしたままもごもご言った。

「ヒナタのその衣装は?」

黒ずくめのキバが寄って来た。

「い、一応魔女…らしいの…」

ヒナタは慌てて小道具のとんがり帽子と箒を手にする。

「ふーん。ま、これじゃサクラが悪魔やるしかないわけだ」
「アラ、なんでよ?!」
「いのの衣装もヒナタの衣装も、胸がねぇとしまらねぇじゃねぇか」
「なぁんですって!?!」

今度はキバに矛先を向けたサクラにいのが、

「もー!いい加減にしなさい!キバも余計なこと言わない!借り物なんだから汚したり破ったりはなしでしょ!」

と、たしなめた。
しゅんとする二人を目で確認すると、いのはナルトへ残りの衣装を差しだし、

「さて、着替えて来て?」

にっこりと笑うと、

「もう時間がないのよ!」

と凄んだ。

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