すべての光を吸い込み、すべての色を弾き出す瞳に、細やかで複雑な感情がゆらりと過る。
怯えた?
驚かせた?
判断する間もなく指先は勝手に、ほんのりと広がりはじめた紅のふちから中心へたどるように頬へと滑ってゆく。
そこへたどり着くより少し早く、わずかにわなないた唇に視線を奪われ、
知らぬ間にまた指はその唇に届く。
「…!」
上唇、下唇。紅を差すように動かすと、はじらいながらも受け入れるようにわずかに動かされ、
どくり…
と、心臓が跳ねあがった。
ほんのわずかに押し込むようにして指を止めると、ほんのわずかだが食むように動く。
嗚呼…愛しい…
言葉に形作られるよりも早く、熱い吐息が漏れた。
すくうようになんども。なんどもなんども撫でると、耐えきれない…という風情を秘めてこぼれた遠慮がちな吐息に、
自分の指も薄桃色に染まった気がした。
自分の指先がこんなにも繊細に動くなんて、
ずっとずっと知らなかった。
注意深く動かせば動かすほど、この指先にこんなにも繊細で複雑で、甘やかな感触を伝えてくるものが存在しているということを、
ずっとずっと知らなかった。
誰よりも強くしなやかな心を秘めていながら、
嗚呼…
彼女はこんなにも…やわらかで甘い。
「ヒナタ…」
空気が震えただけのようだ…と思える囁きに、確かに届いたというように彼女は少しだけ眼を細める。
存在を確かめるように、彼女ではなく自分を安心させるために、
ナルトの指先はヒナタをたどるように蠢く。
顎から首、さらに続く肩、そして…どうしてもまだ視線を向けることの出来ない身体。
隠されたその部分はまたさらに白く、そして眩むほどに、きっと甘いのだろう。
そんなことをぼんやりと想いながらも、
指先は止まらない。
彼女から、指を、視線を、離すことが、出来ない。
「ヒナタ…」
名を呼べば、応えるように唇が動く。
ナ ル ト く ん …
…心が震えた。
白くて甘い。極上の、
彼女はまるで、天上の果実。
未だ口にすることは叶わぬが、内からこぼれる透明な光をその肌にたたえ、ほのかな甘みまで漂わせている…
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