「おう…どした、ヒナタ?ここにいるってばよ」
「ナルトくぅん…」
珍しくヒナタがぐずってる。
こんなに辛れェ風邪は子供んとき以来だって呟いてた。
なんかいろいろ思い出しちまってんのかな?
あんまり度々寝込むからっていい加減自分でやんなって身体鍛えるようになった、って聞いたのは随分前。またか…って感じでひとりぽっちで寝かされてたこととかか思い出してんだろーか。
「ごめんなさい…」
「…何が?」
「だって…」
頬っぺた撫でてた手を握ってうるうるされちまったら動けねーじゃん。
あっ!あっ!コラ!指をはみはみすんじゃねーってばよ!!
「ヒナタ…」
「…行っちゃヤダ…」
ちっちゃなちっちゃな声…
「居るよ…」
「…行っちゃ…やぁ…」
「行かねーよ…」
「……ごめんなさい…」
はみはみすんのをやめて、オレを見上げて泣いてる。
まぁ…確かに…火影コート着てっから…今から里を出るってすぐわかるわな…
こういうとき、自分の都合やキモチで行かないでとかゆーの、ヒナタは一番嫌う。何があっても何にもなかった顔してさらりと見送っちまうやつだ。
そのヒナタが…こんなに言うなんて…
「…影分身行かせて、本体ここに居よーかな…」
「そんなの…ダメだよ…」
ぽろぽろ泣きながら言うんじゃねーよ…
オレは火影コートを脱いでヒナタが寝てる布団に掛けた。
んで、布団に潜り込んでヒナタを抱き締める。
「すぐ帰ってくるから…」
「うん…」
「ちっとだけ待ってろ…すぐだから…」
「…うん」
ヒナタが必死にしがみついてきて肩を震わせて泣く。病気って…代わってやれねーの…辛れェよなぁ…。
「ヒナタ…」
おでこにちゅーする。
ほんとは唇がよかったけど、顔を埋めてたからと、風邪だからたぶん治るまでさしてくんない。
だから、も一回おでこにちゅーした。
「すぐ帰ってくるから…このままで居ろよ…」
「…?」
不思議そうに見上げてきた頬っぺたを、するんと撫でる。
そりゃそーだ。フツー、早く良くなってとかゆーもんな。
んでも今回はダメ。
ぜってーこのままで居てくんねーと!
「いっぱいいっぱい甘えてほしーから!続きしてーから!」
やべ…オレ、めちゃくちゃ嬉しそーに笑っちまってる。
「だから…このまんまで待ってろよ…」
唇にちゅー出来ねェから、おでこと鼻をくっつけた。
「オレ…ヒナタからのおねだりなんて…初めてなんだからよ…」
うわ…声低くなっちまった…。怯えんじゃねーよ、ヒナタ…その顔、そそるんだってばよ…起たねーよーに目一杯堪えてんのに…。
「行ってくる」
小さく囁く。
「…うん」
やっとで聞こえる声。
「すぐ帰ってくる」
「……うん」
嗚呼…やっぱ行きたくねーなァ…
泣かないでよ…ヒナタ…
「…いってらっしゃい」
オレの腕の中から、辛いのを堪えてヒナタが笑ってくれる。
嗚呼…ほんとに…花が咲くような微笑み、ってこのことなんだっ…て、見るたびに思う。
「ヒナタ…」
「はい…?」
「愛してる…」
何回目だろ?おでこにちゅーする。
「きりがねェから行くな…」
布団からそっと出た。
「コート…」
ヒナタが身体を起こそうとするので慌てて止めて、
「いいんだ、無くても差し支えねーから。ハッタリで着てこーか?って言ってただけだから」
「でも…」
うーん、出た。珍しくワガママ言うくれェ弱ってるくせにガンコに気ィ遣いやがって…
「オレの代わりに置いていきてーんだよ」
「でも…これは…」
「んじゃ、鎖帷子脱いでこか?」
「それは!着ていないと!」
「んじゃ、ジャージ脱いでくか?鎖帷子のすぐ上これになっけど」
「それは…変だよ…」
「だろ?これしか置いてくもんねーよ」
頭を撫でてやる。
大人しく撫でられてるけど顔は納得してねーな。
「これ以上言うとヒナタ、剥いてこれでくるんじまうぞ?」
あ。ソレ、いい♪
うわ、顔に出ちまったかも、ヒナタ怯えてら…
「どする?ハダカでこれにくるまっとく?大人しく布団の上からかぶっとく?」
するすると布団におさまっちまった。うーん、残念…。
「行ってきます」
「いってらっしゃい」
オレは火影で、家族を最優先出来ねェ身になっちまったけど。
オレの一番大切はヒナタ、オマエだけだから。
この先もずっとずっと、ずっと。
「オレの帰りを楽しみに待ってるよーに!」
「はいっ…」
とびきりの笑顔をもらって家を出た。
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