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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -




02◆八班の流儀

火影への任務の報告を終えて外へ出るとすぐにキバが、

「なぁ、腹減ってね?一楽行こうぜ!」

と2人を誘った。先程からずっとうつ向いていたヒナタがさっと顔をあげ、えっ?えっ?と戸惑う。

「賛成だ、その後は甘栗甘に行こう。何故なら一楽にはデザートがないからで、任務帰りには食後の甘味も格別だからだ」
「キバくん…シノくん…」

ヒナタはわたわたと2人を交互に見た。

里に帰った途端、全員一致で「お腹すいた!」と叫ばない限り、キバかシノが3人で何か食べに行こうと誘うのは、ヒナタを励ましたり気遣うときがほとんどだった。
ラーメンよりは断然肉派のキバが一楽に行こうと言うのはもちろんそこがナルトの行きつけだからで、
甘いものが大して好きではないシノが甘栗甘に行こうと言うのはヒナタの好物がぜんざいだからに他ならない。
今日はその両方へと言うのであれば、これはもう自分を気遣ってであることに疑いの余地はない…ヒナタは慌てた。

「あっ、あのねっ、わ、私なら大丈夫だからっ…だからっ…あのっ…」
「キバ…わかっているとは思うが…言い出しっぺの法則だ」
「へいへい、オレが一楽は持つぜ〜、って!!オレすげぇ損じゃねぇ?!」
「シ、シノくんっ…キ、キバくんっ…」
「ラーメンだけで済ませればいいものを、替え玉だの替えチャーシューなど追加するからだ…」
「へっ!ラーメン一杯でなんか済むかよ!」
「あのっ…あのっ…わ、私ねっ…」
「済まそうと思えば済むものだ。済まそうと思う気持ちがなければいつまでたっても無理だ。何故なら…」
「あーもー!わかった!こうなりゃ甘栗甘でもめいっぱい食ってやる!そんでバランス取ってやるぜ!」
「その食べ方は感心しない、何故なら…」
「食いたいとき食えるだけ食やいいんだ!なぁ赤丸!」
「ワン!」
「あのねっ…あのねっ…」

先頭をゆくキバはたまにしか振り向かないし、シノはキバに並ぼうともせず斜め後ろからついて歩く。ヒナタは必死に足を早めるが、シノにも2人の会話にも追い付けないまま、
結局そのまま一楽に到着してしまった。

「お、らっしゃい!」

テウチがカウンター越しに声をかける。
ヒナタは抗議の意味を籠めて2人を軽く睨んだが、どちらもそんなもの見えていないかのように、ヒナタのための席とばかりに間を1つ開けてさっさとカウンター前に座ってしまう。
仕方なくそこに座ったヒナタはなおもちいさく唇を引き結んで両隣を交互に睨むが、シノもキバも全く意に介していない。
その様子にテウチがついに噴きだした。

「わっはっは!仲がいいねぇ、八班のみんなも!」

明るく笑い飛ばすので、つられてヒナタも首をすくめながらやっと笑った。キバとシノはヒナタの頭越しに顔を見合わせてにやっと笑う。

「なんだかよくわかんないけど、大事にされてるねぇヒナタちゃん」

続けて、今度はほめられてヒナタはますます首をすくめる。

「ヒナタちゃんは可愛いからなぁ、2人の気持ちもわかるってもんだ!」
「そ、そんな…そんなことないです…」

椅子からずり落ちんばかりに萎縮するヒナタに、キバがついに耐え切れず、

「あのなぁ、ヒナタ?」

今日二度目の呼びかけをする。

「さっきも言おうと思ったんだけどよ、お前さぁ、いいかげんそこそこ可愛いってこと自覚したほうがいいぜ?」
「えっ?!な、何を言うの?!?!キバくんっ…!」
「キバの言う通り、ある程度の自覚は大切だ。なぜならそれは自己防衛につながるからだ。そもそも我々ももう年齢的に…」
「そうよぉ!ヒナタちゃんたら、大戦後めきめき綺麗になったって評判なんだから!自信を持ちなさいって!」

3人のやりとりにアヤメもぐいぐい参加してくる。
それでも、とんでもない!というように目をかたくつぶり必死に首を左右に振るヒナタに、キバはため息をついた。

「まぁ…ここで調子に乗ったりしねぇのがヒナタなんだけどよ…」
「まったくだ」

テウチがにこにこしながら3人の前へラーメンを置いて行く。

「でもよぉ、サクラやいのの何分の一かくれぇは調子に乗ったっていいと俺は思うぜ?」

ばくん!とチャーシューにかぶりつきながらキバが食い下がらる。

「あいつらの図々しさをちっとは見習ってもいいんじゃねぇか?」

麺を啜り込もうと箸で持ち上げつつ得々と言うキバへ、シノが声をかけようとして…中断する。

「サクラなんか何から何までナルトに奢らせてヘーキだし、いのはいっつもシカマルもチョウジも自分の子分!みてーな顔して引き連れてんじゃん」

ぱきぽき…と小さな音がするのだが、ずぞぞぞ!と自分が麺を啜る音でキバには聞こえなかったようだ。

「何から何までとは失礼な!!」
「誰が誰を従えてるってぇ?!」

真後ろに立ったいのがキバの首根っこを引っ張ってカウンターから引きはがすと、すかさず、

「しゃーーー!んなろーーーーっっっ!!」

サクラが、武道の型か?というほどきっちりと腰を入れてキバを殴り飛ばした。

「なんの話してたんだかしんないけど失礼な!」
「いないところで何言われてるかわかったもんじゃないわね!」

いのとサクラが並んで暖簾をくぐって入って来た。

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