01◆視線の先
今日も木の葉の里の阿吽門は人の出入りで賑わっている。
医療班からの依頼で薬材を捕獲して帰郷したキバ・シノ・ヒナタの八班が門をくぐると、すぐに向こうからサクラが駆け寄ってきた。
「お疲れさま!悪かったわね、ありがとう」
「直接受け取りに来るたぁ、そんなに品不足だったのかよ?」
キバが手にしていた包みをほい、と渡すと、キバには軽いがサクラには重かったのかわずかによろめくが健気に踏ん張り、ニコッと笑うと、
「そうなの!作っても作っても出ていっちゃってストックがなかなか出来ないのよ。ほんと助かる!」
疲れているだろうに明るく答える。
医局を抜け出してきたのだろう、白衣姿も凛々しいサクラは現・火影である綱手をもしのぐと言われる強さを持ちながら、生来の愛らしい顔立ちとさっぱりした気性のギャップがあってか、近頃は里を越えて人気があると聞く。事実、行き交う人々の中かなりの確率で男性がサクラをちらちらと眺めてゆく。
「ほんとありがとう!もう行くね!」
立ち去るサクラを見送り、ほぅっ…と小さくため息をついたヒナタが、
「や、やっぱり、か、可愛いね…サクラさん…目立つね」
両隣のキバとシノに同意を求める。
「あのなぁ、ヒナタ?」
キバが呆れて話しだした所へ、後ろから元気な声が響いた。
「あっれー?サっクラちゃーん!おーい!サクラちゃーん!!たっだいまー♪」
3人の脇をあっという間に通り過ぎたナルトが、大急ぎでサクラに駆け寄り、何やら必死に話しかけ始めるが、先を急ぐサクラに邪険に扱われている。
「あーもう、報告が終わるまでが任務だって、いつになったら覚えてくれるんだか…おや?キバ、シノ、ヒナタ、君たちも今帰り?」
後ろからのんびりと歩いてきたカカシがにこりと3人に挨拶してくれた。
「はい!」
「…すごい荷物だね…これ全部君たちが?!」
シノの後ろに積み上げられた箱を見上げて絶句する。それを白衣を着た人たちが台車を使って病院へ運ぼうと忙しく働いている。キバがサクラに手渡したのはほんの一部だったようだ。
「薬材なんですけどちょくちょく在庫切れするっつーんで、一気にがばーっと集めちまおうかってなりまして」
「そ、その方が、こ、効率もいいし…って…」
「我々が全力を尽くした結果…というわけです」
交代で説明してくれる様子にカカシは目を細める。
『上忍になったばかりで、いきなりクセの強い子ばかり当たってしまったわ…』
『おや、紅にしては珍しく弱気だね?』
なんて会話をした日を思い出す。
その紅もそろそろ産休から復帰するとか耳にするが、その間にも部下たちは頼もしく成長し、すっかり3人でも抜群のチームプレーを発揮するようになっている。
それにくらべてうちの子は…英雄だの最強の忍だなんて呼ばれるようになったってアレだよ…やれやれといった様子でナルトを見やり、
「おーい!ナルトー!」
呼び掛けるが返事がない。
「サクラが喜ぶことなんだけどなー」
「なになに?!なんだってばよ、カカシ先生!」
“サクラ”の単語に素早く反応し、しゅびっ!と戻ってきたナルトに小さくため息をついた後、顎で箱の山を指し示し、
「これ手伝ってやんなさいよ、全部サクラたちが使う薬材なんだって。ナルトが手伝えばすぐでしょ」
「おう!まっかせといて!」
胸を叩くとすぐさま影分身を数体出し、せっせと手伝い始めた。
「んじゃ、先生は報告行くからヨロシクね〜。キバたちも行こうか?」
八班3人を促し、歩き出した。
「サクラちゃーん!すぐに届けるからね〜!」
ナルトはサクラに向かって手を振ったが、サクラはもう振り返ってくれない。
「………ちぇっ…」
ナルトは一瞬だけ切ない目をしてサクラの背中を見つめたあと、ふっと笑って頭を振り、
「さぁて!さっさと済ますってばよ!」
明るい声でそう言うと張り切って作業を再開した。
その一部始終を見つめていたヒナタがひっそりと息を漏らす。
「ナルトのヤツ!結局オレらには気づかねぇままかよ!」
へっ!と毒づきながらキバもヒナタの様子から目を離していなかった。
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