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- ナノ -



ふと、

「オレ…思ったんだけど」
「?なぁに?ナルトくん…」
「ヒアシのおっちゃんもさぁ、この木を見ながら育ったんだろ?」
「そ、そうだね、そうなるね…」

ナルトは桜を見上げたまま首をかしげて、こつん、とヒナタの頭に自分の頭を寄せた。

「こんだけの木を守ってきたことも、守っていこうってことも、生半可なことじゃねェよな」
「…そうだね。…ほんとにそうだね」
「それが例えば『本家の桜』なんて呼ばれてたらさ、そんで本家に生まれてたらさ…どうだろう…」

ざざざ、と風が巻き起こる。枝が揺れて一瞬青空がのぞいた。

「ジュウアツっての?責任なんて言葉よりもずっしり重たいもん、抱えてく覚悟と強さを持ったヤツになんなきゃ、自分の子供もそう育てなきゃって…思うかも…な」

そのまま見上げていたヒナタの目を、蒼い瞳がまっすぐ射抜く。

「ヒナタが女で、可愛ければなおさら…どうしても厳しくなっちまう…」

蒼い光がふっとやわらぐ。

「想像でもの言ってごめん。ヒナタが可愛くて可愛がりたくても、むつかしかったんじゃねェかなって。ちっと思った…」
「ナルトくん…」
「シノがさ、この木すっげェ手がかかるって言ってたよな。ヒアシのおっちゃんのおっちゃんの頃からもう古いって言われてた木を、手入れして手入れして、今もこうして元気で綺麗に花咲かせてる」
「うん…」
「自分の代で枯らしたらって、ちょっと怖いよな?」
「うん」
「んで、手入れして手入れしても、これは日向の桜で、本家の桜じゃねェ」
「…うん」
「どんなに綺麗に咲いても、本家の手柄にゃなんねェ。だけど、本家が投げだすわけにもいかねェ」
「…うん」

花びらが音もなくはら…はら…と散り、2人に降り注ぐ。

「…ヒナタは…もう知ってる」
「?」
「ヒアシのおっちゃんがヒナタに伝えたかった『強さ』がなんだったのか、そんでそれはヒナタにはもう備わってる」
「!」
「なんでか知んないけど、ヒナタには備わってたのに、だぁれも気づかなかっただけなんだ…」

ナルトはヒナタがきゅうぅっと抱き寄せた。

「やっぱりヒナタが宗家なんだよ。ハナビちゃんには悪いけど、ヒナタにしか備わってねェ、ヒナタの『強さ』が、きっとヒアシのおっちゃんがヒナタに持ってもらいたかった『強さ』だ」

ナルトの言葉をじっと聞きながら肩に頭を預けているヒナタの髪を、何度も何度も撫でながらナルトは続ける。

「自信を持てよ、ヒナタ。お前は愛されてるし、誰もが認める宗家だよ。ヒアシのおっちゃんが伝えたかったこと、お前はちゃんと受け取ってる。ヒナタは間違いなく、」

ヒナタの顔を覗き込み、まっすぐな視線で言い切る。

「日向の、ヒアシのおっちゃんの自慢の娘だ」

呆然と見開いた瞳から、ほろ…ほろ…と涙がこぼれ、あとは堰を切ったようにぼろぼろと流れ落ちた。
そんなことないよとか、うそだよ、と言おうとしても、
館の奥でヒアシの気配が揺らいだのを感じては、何も言えなくなる。

「…ただ強いだけでは宗家じゃない…」

嗚咽が漏れだしたヒナタは返事ができず頷く。

「でも…強くもなきゃいけねェ…」

ヒナタをじっと見守りながらも自分も目を赤くしているナルトが、ニシシと笑い、

「ま!ヒアシのおっちゃんのやり方が全部よかったとは思わねェけどな!ひどいことはされたよなァ?ヒナタ!」

いいこいいこ、とまた頭を撫でる。

「あ…りが…と…ナル…ト…く…ん…」
「あんときのことは辛かったって言っていいと思うぜ」
「う…ん…」
「まぁあんまり言ってやんのも、おっちゃんが可哀そうだけどな!!」

またヒアシの気配が動いたのを感じて、2人で目を合わせてふふっと笑う。

「あ…あのね、ナルトくん…」

涙をぬぐいながらひどい鼻声でヒナタが言う。

「わ、私…宗家じゃない…から…あえて言うなら…次期宗家候補…かな?」
「えっ?!そうなの!?てゆーか、違うの!?!えっ?えっ?宗家って、あれ?本家か?えっ?…あれ?あれ??」

ふふふ、と笑うヒナタにつられるように、屋敷中にいた人たちが笑った。






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