「えーと、何書きゃ良いんだ」
拝啓 ジュリオ様
「却下。固すぎる。こんなもん気軽で良いよな」
ジュリオへ
そっちに帰ってからは元気にしてるか?
俺は元気だ。
「『俺』はまだ読めねぇかな。…でもこれも勉強の為だ。少しぐらい難しい漢字も使うか」
お前がイタリアに帰ってもう三ヶ月も経つんだな。
未だにクラスの奴等は寂しがってたぞ。
「俺も…止め止め。これは無し」
ちゃんと日本語の勉強はしてるか?
卒業後、こっちに暮らすならこの手紙ぐらい読めるようになれよ。
それから、返事も日本語で返してくるように。
俺、イタリア語あんま分かんねぇからな。
その為にも勉強はしっかりしろよ。
「あいつ、意外と努力家だからちゃんと勉強してると思うけどな」
次にこっちに来るのは卒業してからか。
もし部屋が見つかってないなら俺の家に住まわしてやるからな。
住む場所の心配はしなくて良い。
「だから安心、しろ…って、これって同棲…いやいや!ルームシェアだ!」
またお前に会えるのを楽しみに待ってる。
勉強頑張れよ。
隆司より
「これでよし。明日出しに行くか」
拝啓 隆司先生
久し振りだね。僕は元気にしてるよ。
この三ヶ月、隆司が居ないだけで僕の世界は色が無くなってしまったみたいだ。
クラスの皆も懐かしいな。
隆司は寂しくなかった?僕は寂しいよ。だから日本の勉強をする時はいつも隆司を思い浮かべてるんだ。お陰で日本の事がもっともっと好きになったよ。
日本語はほぼ完璧…って言いたいけど漢字はまだ辞書見ながらじゃないと上手く書けないんだ。
隆司の手紙、ちゃんと読めたし意味も理解出来たよ。
隆司に会うまでには漢字も完璧にするよ。
僕は最初から隆司と同棲するつもりだったよ。
一緒のベッドで寝ようね。一日の始まりも終わりも隆司と一緒って考えただけで幸せだ。
僕がそっちに行ったら毎朝僕の為に味噌汁を作ってください。
誰よりも貴方を愛しています。
敬具
貴方のジュリオより
「……ばーか。さっさと卒業して俺のとこに来いよ、ジュリオ」
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