夏祭り | ナノ
 



今日は近所の神社で祭りをしている。
あまり大きな祭りじゃないけど毎年凄い賑わいだ。
折角だからと母に浴衣を着せられた妹と一緒に出掛けた。
何故か俺まで浴衣を着せられて。
俺、人混み好きじゃないんだけどなぁ。


神社が近付くとやっぱり人が増えてきたな。
こんな所で好奇心旺盛な幼稚園児を見失ったら大変だ。
しっかりと手を握って歩いていると見慣れた姿が。

「おぉー、何だよ。トモも来てたのか」

「アキラこそ。一人?」

「いや、姉貴と。今そこで綿菓子買ってる」

向こうも俺に気付いて近付いてきた。
学校の制服姿を見慣れているからか凄く新鮮。
男らしい黒の甚平がよく似合ってる。
あまりに似合ってるから見とれていたら目が合った。

「あ、姉貴。こいつの妹さん見てやってくれよ」

「良いわよ。男同士二人で楽しんでらっしゃい。お嬢ちゃんはお姉さんと回ろうねー?」

「えっ、…」

「行くぞ」

俺の返答も聞かずにアキラは先々歩いてく。
妹は笑顔で手を振ってるけど本当に良いんだろうか。

「そうだ、これやる」

「え?」

やっと立ち止まったかと思えばさっきまでアキラの頭に付けられてたキツネのお面を頭に付けられた。
何故かまじまじと見られてる。

「やっぱお前ってキツネに似てるよな。目ぇつり上がって細いし」

「うるさい」

「褒めてんだよ。俺はキツネ好きだぞ」


不意打ちにそんな事を言われるとは思っていなくて顔が熱い。
こいつが好きだと言ったのはキツネであって俺じゃないのに。

「なぁ、型抜きしようぜ」

「おう」

「あ、それとさ、お前浴衣似合うな」


振り向き様に笑顔でそんな事を言わないでほしい。
当の本人は何事も無いように俺と手を繋いで歩いてく。
赤くなった顔を隠すようにお面を被った。
人混みの中、自分の鼓動だけがやけに大きく聞こえた。
人混みは相変わらず好きにはなれそうにないけど夏祭りも悪くない。
そんな事を思いながらはぐれないようにそっと手を握り返した。



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