「まっ、前崎君っ。先にシャワー浴びてくるから僕の部屋で待っててねっ」
「ああ」
同じ男かって疑いたくなるぐらい小柄で女みたいな顔をしたこの部屋の住人は顔を赤らめて浴室へと向かった。
何であんなに楽しそうに笑うのかが分かんねぇ。
ただ持て余した性欲の捌け口になるのがそんなに嬉しいのか。
お前はその他大勢と同じ、ただの捌け口なのに。
「ん?」
名前も覚えていない男の部屋へ向かおうとしたら隣から声が聞こえた。
あいつが気にするなって言ったからてっきり居ないものだと思っていた。
でも声が聞こえてる。
しかもセックス特有の甘い声。
隣も楽しんでるから気にすんなって事か。
そう思ってドアに手を伸ばして固まった。
『あっあっあぁんっ!なかにっなかにだしちゃっ、あかちゃんできちゃうぅぅ!』
隣から聞こえてきたのは明らかに女の声だ。
こんな閉鎖的な男子校の寮に女を連れ込むなんて出来ない。
こいつはどうやって連れ込んだんだ?
何よりも、その声の主が気になった。
AVの女でもこんなに良い声で啼かねぇぞ。
部屋の主に気付かれないようにそっとドアを開けた。
その先の光景に目を見開かせる。
部屋の中にいるのは男1人。
その男はパソコンの前に座って食い入るように画面を見てオナッてる。
俺が気になっていた声の主はパソコンゲームの女だった。
「はぁっ、あっう、かぁいいよぉ…」
女の声に混じって聞こえた男の声に体が熱くなった。
うっとりと画面を見て手に収まる程のチンポを扱いて啼いてる。
顔は見えないのに、酷く艶やかに感じた。
「あっあぁっななちゃんっ、おれっ、おれっ…あぁっ!」
一層甲高い声を上げて男はイッたみたいだ。
マウスの近くに置いていたタオルを手に取って手を拭いてる。
女の声も止んで男の吐息だけが耳に届く。
いや、男の声を聞いた時からゲームの女の声なんか聞こえていなかった。
俺の股間が今までに無い程熱を宿してる。
「前崎君、どうしたの?」
男を観察してる間に今日の相手は風呂から上がったらしい。
気付かれないように慎重にドアを閉めて笑みを浮かべた。
「なぁ、隣の部屋の奴は誰だ?」
「えっ?違うクラスの相沢 優だよ。あまりに平凡だから名前聞いても分かんないと思うけど…」
「相沢 優、ね…」
「それより前崎君、早く」
「ああ、来いよ」
部屋に入ると嬉しそうに男は跨がって自ら腰を振ってる。
いつもなら好きにさせてるが今日は我慢が聞かない。
相沢のさっきの喘ぎ声を思い出すだけで煽られる。
何より、隣の部屋に相沢が居るという事に興奮した。
男が限界を訴えても欲が治まる事は無かった。
2年になった春。
俺は相沢と同じクラス、同じ部屋になるように裏から手を回した。
金が物を言う学校だ。
それぐらい容易くできた。
相沢の話を聞くと、ビビリらしい。
ならまず口調は穏やかにしないと。
問題はあのゲームをどう切り出すかだな。
計画を練って新しい部屋の扉を開けた。
「はっはっ初めましてっ!おぉ、君美形ですねっ!えっと、俺は相沢 優って言います!同室の子、だよね?名前は?」
「…疾風。前崎 疾風だよ。これから宜しく。ね、優って呼んでいい?これから仲良くなるんだし」
「喜んでっ!じゃあ俺は疾風って呼ばせてもらうなっ」
初めて話した相沢は、優は思ったより話しやすかった。
俺の頭を見てどもったけど微笑んだら安心したのか喋り掛けてくる。
これならあの話題も切り出せそうだ。
「そうだ!あのさっ、俺、実はエロゲオタクなんですっ!エロゲって二次元の女の子とあっはんな事するゲームなんだけどさっ!良ければお近づきにどうぞっ!」
一気に喋ったかと思うと深々と頭を下げて1つのゲームソフトを差し出してきた。
そのパッケージの女の子は俺が初めて優を見た時に啼いてた子だった。
「ありがとう…実はさ、俺もこういうの興味あったんだ」
「まっまっマジ!?やったー!同志だっ」
さっきまで恐る恐るだったのにもう笑ってる。
見てて飽きない。
自分の感情に素直だな。
俺を見ても騒がないどころか俺が誰かも知らないなんて。
普通に接してもらえる事がこんなに嬉しいなんて思わなかった。
こいつなら…優なら、ずっと傍に居てほしい。
ずっと傍に居たい。
「優、これから宜しく」
「うんっ。こちらこそ、宜しくなっ」
End.
優と疾風の出会いのお話です。
疾風は優に出会うまではちょっとやさぐれてました。
あと、優は勝手に同志=同じ童貞と思ってますが疾風は経験豊富です(笑)
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