彼女とは、所謂“できちゃった結婚”ってやつだった。 彼女との結婚まで考えていたかと言われれば、大きく頷く程の段階ではなかった。
でも彼女と一緒にいると楽しかったし、色々な面で相性も良かったから
大好きだったし、愛していた。
だから、彼女から“子供ができた”と聞かされた時は、迷わずに答えた。
結婚しよう、って。
彼女の眠る棺の前で、彼女との出会いから今までのことを走馬灯のように思い出していた。 腕の中に、まだ小さくて幼い……彼女との愛の証を抱きながら。
「ママ、どうしてねんねしてるの?」
「ママはね……遠い、遠い国に行ったんだよ……」
「どうして?ななみもいっしょにいく!」
「七海もね、いつかは必ずそこに行くんだよ。ママは……先に行ってるからゆっくりおいでねって……言ってるよ……」
彼女の死を理解するには、まだ七海は幼すぎた。 生まれて初めて遭遇した“死”が母親だなんて、あまりにも残酷だと思った。
目を開けてくれない彼女を目の前にしても、未だに実感が湧かなくて。 僕はこの先のことをぼんやりと考えていた。
七海と二人、これからどうやって生きていけばいいんだろう、と。
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