「いちにのさんしで色づく世界に」より


「ところで、あんたはナルを見て何も思わないの?」
 質問の意図が分からず首を傾げると、綾子さんはじれたように詰め寄ってきた。
「あいつ見てくれだけはめちゃめちゃいいじゃない。中身はともかく、あの外見に騙される女は多いわ。そこのところ、あんたはどう思ってんのよ」
「確かに綺麗だとは思いますけど……」
 まるで精巧に作られた人形みたいで。
「ふーん。付き合いたいとかはない訳?」
「いえ全く。考えたこともないです」
 整った顔なら結構見慣れてきたし。龍さんしかり、アパートにしょっちゅう遊びに来る夕士くんの親友の長谷さんしかりだ。
 長谷さんには初対面の時に色とりどりの可憐な花束を渡されてびっくりしてしまった。後に本人が明かしてくれたが、長谷さんなりの処世術らしい。確かに計算だろうと何だろうと優しくしてもらって嬉しかったから、私も例に漏れずすっかり懐いている。
 夕士くんを気にかけてやって下さいって頼まれたのに、私の方がお世話になっているのは少々頂けないけれど。
 お人好しだし、何より夕士くんは世話を焼くのがめちゃくちゃ上手いのだ。
「ほら、綺麗な薔薇には棘があるって言うじゃないですか。私、君子危うきに力よらずなので」
「へえ。やっぱあんた珍しいわねー」

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