存外世界は楽にできている。
息をすることに躊躇することもなければ、容易くその生を手放すことだって可能だ、誰にだって。等しく与えられた権利を、束ねて締め上げて、規則という箱の中にしまいこんでしまっているのは、理不尽という三文字を振りかざして我が物顔で歩く大人だと信じてやまなかった。

つまるところ、大人が嫌いだった。
将来なりたくないものはなんですかと聞かれたら、真っ先に大人と答えよう。年老いるということがまるで何かの罰ゲームかのようにも感じられた。
成長することは、もっとも害悪なものであると、そう植え付けられていた。


今自分は、憎むべき大人と、永遠であるべきと考える子供の境界線に立つなんとも中途半端な存在だった。どこにも行けず、ただそこに立ち尽くすのみのつまらない人間になっていた。
あと数ヶ月してしまえば、屁理屈を纏いさも己が他人よりも上に立っているのだと勘違いを重ねる大人となってしまう。逃げれる術は考える限りではひとつだけ残されていた。


世界を飛び立つ。嗚呼、目の前に広がるコンクリートの魔物たちが笑っている。ざまあみろ、見上げた太陽は忌々しくそう吐き捨てたように思われた。


「夢の話なら聞きあきたぞ」
「自殺する夢っていうのもまた面白いよね」
「お前の中二脳にはもううんざりだ」
「ひどいなぁ」


溶けないゆめ
(:20121116)
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