欲しいならば、奪えばいいのに。
ただ単純に、安直に、子供のように素直にそう考えていた。いらなければ捨てて、欲しいなら奪う。そういった簡単なサイクルの中に人は立っているのではないのか。
違うと分かったのは、あのバケモノを見て、そしてあいつに会った瞬間。長らく自分の中にあった稚拙な考えが頭ごなしに否定されたような、そんな奴に妙に苛立ちを覚えた。
わけのわからないものは、キライ。これはずっと変わらない。だからこそ、変わらず今日も奴が嫌いだった。嫌いで、でも目が離せなかった。
情報屋になったのだって、そのおまけのようなものだった。改めて考え直すと、今に至るまでの道すべてに関して奴が関わっているような気がして、腹が立った。踏み込ませたつもりはこちらにはさらさらないのに、いつの間にか侵入されていた。
気づけなかったのがえらく癪だ。だから死んでしまえばいい、九十九屋なんて。
「告白のようにも聞こえるんだか、自惚れてもいいのかなこれは?」
「しね」
そんなはずがあるわけがない。
あっていいはずがない。
あってほしくない。
折原臨也を構成するものに、奴が踏み込んでいい領域などない。
認めてしまえば楽なのにと、愉快げに呟く奴の表情を黒く塗りつぶす。


こんなもの、俺は知らない。


(:20120725)
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