「愛情がない」
文句を言われた。
「えー」
「嫌そうにしないでくださいよ俺にもデレをください」
「やだよ調子乗るじゃん」
「いいじゃないっすか」
「調子乗った結果を考慮して言ってるの」
仮にもベッドの中で話す話題じゃないだろう。なんだか勢いにまかせてぐすぐずになりそうな予感に危機感を抱きながらも、一応彼の言いたいことは聞いてやろうと耳を傾ける。
「付き合って何年になると思ってんですか、臨也さん」
「…3年?」
「あたりです。ならそろそろいい具合なんじゃないですか。というか遅すぎますいくら待ったと思ってんですかアンタ」
「いいじゃん、俺のツン五割に正臣くんのデレ五割でバランスいいじゃん」
「ツン成分はいらないんですって」
がっくりという風に肩を落とす様は、正直ざまあみろとも思ったのだが、でも確かに3年も一途に想われていて可哀想なことは可哀想だなあ、とは思う。ぶっちゃけそんなこと知ったこっちゃないけど。
「濃厚なデレを期待します」
「そんなキャラに見えるんだ?」
「静雄さんにはデレデレなくせに…!!」
「どこをどう見たらそうなった」
「楽しそうじゃないっすか」
「…まあ、昔よりは関係が穏やかになったことは否めないけども」
「恋人放置ですか」
「いちいち拗ねないでよ…」
今の正臣くんを言葉で表すなら、面倒臭い、この一言に限る。
「正臣くんだって昔はツンツンだったくせに」
「素直じゃなかっただけです」
「今は正直うざい、かな」
「仮にも愛し合ってる奴に言う言葉ですか?!」
「君もこんな感じだったけどねぇ」
「俺のばかああああああ」
わめき散らすあたりを見ると、どうやら彼がどう頑張っても甘やかな空気に変わることはないみたいで若干安心した。
このまま寝てしまえ、そして今あったこと全て夢の中に置いてきてしまえ。
「というか、現状維持に努めないと、いつか横から手出されるかもよ?」
「…自覚はしてます」
「本気にするんだ」
「本当のことですから」
「うわあ、微妙な気持ち」
「おい、原因」
「俺は自覚ないけどね」
「無防備って罪…」
枕に顔を埋めてうんうんと唸り出す正臣くん。時刻は只今23時ジャスト、良い子はとっくの昔にご就寝なされている頃だ。
「俺もう寝るよ?」
「…はい」
声音も情けなく弱々しいものに変わっていた。どうせこのままうじうじ悩むんだろうなあ。二十歳迎えてるいい大人が、乙女みたいに一つのことを延々と考えてるのは見てて気持ち悪い、と内心毒づく。
そもそも、デレがないならなんで一緒に寝るなんていう行為ができるのか、彼ははたして分かっているのか。
いや、多分きっとあの足りない頭では理解が追い付いていないのだろう。
「俺なんかしましたかね…」
「さあ?胸に手当てて考えてみたら?」
「考えすぎで頭が痛いです」
「なら寝なよ」
「そうします…」
「…分かった、正臣くんはそれが駄目なんだ」
「はい?」
「なんでもない。寝ろ」
このヘタレめが。


(:20110619)
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