Act.16
「…なにしてんのはるちゃん」
「今日神楽ちゃんの誕生日だから輪っか作ってるの」
「ここでパーティーする気なの?」
「うん」
当たり前じゃん、って言ったら山崎さんが呆れたように深いため息をついた。幸せ逃げるよ。
「副長には?」
「言ってない」
「絶対怒られるよ」
「大丈夫。慣れたから」
「それ大丈夫じゃないでしょ」
怒られるのに慣れるってどうなの、って思ったけどほんとに慣れたんだもん。認めざるを得ない。
土方さんになんか1日5回は怒られてる。
「…知らないよ、俺」
「いいもーん」
ハァ、とため息をついた山崎さんが部屋から出て行った。たぶん土方さんに報告に。あのやろう言うなよまじ。
山崎さんが居なくなった部屋で1人で輪っか作りに専念した。神楽ちゃん喜んでくれるかな〜。
それから数時間後に輪っかも出来て部屋の飾り付けも完成した。そして神楽ちゃんを呼び出すためにチラシに書いてある電話番号に電話をかけた。
「……あ、銀ちゃん?」
「なんだはるか 」
「なんだってなんだ。…あのね、今日時間ある?」
「今日?今日は新八の家で飯だけど、なんかあったか?」
「え、あ、まじか。なんでもないよーじゃ、またね」
出遅れた。…神楽ちゃん祝いたかったなあ。あたしが新八くんの家行けばいい話だけどね。ほらあっちは水いらずで祝いたいかもしれないじゃん。そう思ったらなんか言い出せなかった。
「神楽ちゃんおめでと」
1人で呟いてから目の前のケーキを食べようとしたけど食べる気にもなれず寝転んだ。
なんか、1人になるのって久しぶりだな。寂しいな。お母さんとお父さん心配してるだろうなあ。久々に会いたいな。
「…ちくしょー」
「はる」
襖の向こうから聞こえた声に返事をしたらゆっくりと襖が開かれた。
「誕生日するんじゃねえのかよ」
「やっぱりチクりやがったなあの野郎……新八くんの家で祝うって」
そう言ったら土方さんはそうか、とだけ言ってから出て行った。冷たい人だなあもう。
あれ、そういえば怒らないのかな、勝手に神楽ちゃんの誕生日パーティー開こうとしてたこと。…無しになったからいいのか。
それから数時間、何をしていたかも忘れたけどいつの間にか日暮れ時だった。
「…腹減った」
テーブルにあるケーキを見て溶けてるだろうな、なんて呑気に考えて冷蔵庫に運ぶことにした。
襖に手をかけたら自分が引く前に襖が開かれた。そこにいた人物に驚いたのは言うまでもない。
「神楽ちゃん!?銀ちゃんに、新八くんも、」
「こんばんは、はるさん」
「え、新八くんの家でパーティーは?」
「少ないより多い方が楽しいアル!それにここの方がパーティーっぽいネ!」
輪っかやら飾りやらを指差しながら言う神楽ちゃんにうるっときた。可愛すぎだバカ。
「神楽ちゃあああああん、おめでとう!大好きだ!」
「ありがとな!私もはる大好きアル!」
ぎゅうぎゅうと抱き締めて来る神楽ちゃんをぎゅうぎゅうと抱き締め返した。ほんとにもう、どっちが祝われる側かわかんないよ。
Act.16 Happy Birthday KAGURA
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