Act.12



「はるちゃん!?どうしたのそれ、」

「……あたしは悪くない」

「ちょ、ま、まず手当てからするからおいで」


外出許可が出た、と喜びながら外に出て行ったはるちゃんが帰ってきた。

無事に帰ってきたのはいいが、すごい怪我をしている。

しかし手当てをし終わってからもはるちゃんはずっと無言。黙秘ってか。


「…とりあえず、局長達呼んで来るから、そこ座って待ってて。」

「い、いい!呼ばなくていい!お願い山崎さん、言わないで!」

「そんな事言ったって、そんな傷すぐバレるよ。それなら今言った方がいいんじゃない?」

「……」


俺の言葉に納得したのか、渋々、といった感じで俯いた。

この様子じゃはるちゃんが逃げ出すのも時間の問題かもしれない。早く局長と副長を呼んで来よう。


「局長、はるちゃんがすごい傷を負って帰ってきました、」

「なに!?はるちゃんが!?」

「はい。今は俺の部屋で手当てをして休ませてます」


そう言うと局長や傍に居た副長と沖田さんがすぐに立ち上がり走って行った。

俺もそれに着いてはるちゃんが居る自分の部屋に向かった。


「……で、どうしたんだ、その傷は。」

「転んだ」

「嘘つけ」

「…はるちゃん、俺にあたしは悪くないって言ったよね。誰かに何かされたの?」

「……」

「はるちゃん」

「……」

「俺等は、そんなに頼りないか?」


局長がそう口を開いた。するとはるちゃんはバッと顔を上げた。ああ、本当に酷い傷だなあ。

きっと局長も副長も沖田さんもはるちゃんに怪我させた奴をぶん殴りたいに違いない。それは俺も例外じゃなくて。

なんて、そんな事を考えてたらはるちゃんが口を開いた。


「そんな事ない!!みんな、頼れる人だバカヤロー!!」

「いやいや何で怒ってんのアンタ」

「だって!だっ、て!」


普段滅多に泣かないはるちゃんが目にうっすら涙を浮かべるもんだから驚くったらない。


「だって、なんだ?」

「…やっぱ、言えない」

「…なぁ、はるちゃん。君は何か勘違いしているみたいだが、俺達ははるちゃんの事を迷惑だなんだって思ったりしない。はるちゃんの事が大切で、心配だから言うんだ。」

「…、」

「だから、話してくれないか」

「…今日、」


やっと口を開いたはるちゃんに局長は少しだけ微笑んだ。

この人は本当に凄い。


「町で、歩いてたら、真選組の話が耳に入って、」

「それで、聞き耳を立てて少しだけ近寄ったら、男達が『真選組は役立たずの人斬り集団だ』って、言ってて、」

「腹が立ったから、文句言ったら、殴られた」


…この子はなんでこう、自分の事を大切にしないかなぁ。

俺達がそんな事を言われるのは慣れている。でもはるちゃんは初めてだから腹が立ったんだろうな。

こんな時に不謹慎だけど、真選組のために怒ってくれた事がすごく、嬉しい。


「…バカか、お前は」

「だって…っ悔しかったんだもん、!確かに皆怖い顔の人ばっかだし、短気な人も、ストーカーする人も居るし、サドで、ひどい、ひと、も、居るげど、みんな、みんな、優じぐで、町のために戦っで、る、いい人ばかり、だのに…っ!」


びーびーと鼻水と涙でぐちゃぐちゃな顔で泣くはるちゃんに心温まった。


「はるちゃん」

「はる」

「ブス」

「はるちゃん」



“ありがとう”
(真選組のために怒ってくれた君が)
(大切だから)

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