小説 | ナノ
2

誰も何も言わずにジジィの背中を追う。途中山崎が、あ、と声をあげた。


「俺、局長呼んできます!」

「…ああ、頼む」


そう言うと山崎はぺこりと頭を下げて走ってった。でも分かる。あいつははるを見たくなかっのたかもしれない。あいつははるとは本当に仲良かった。

顔を合わせりゃ1時間は立ち話だ。そんなはるが急に居なくなったんだ。そりゃ目を塞ぎたくもなる。逆にこんな冷静な俺がおかしいんだ。

あーだこーだ考えてるうちにジジィが扉の前で立ち止まった。


「ここだ」


ジジィはそう言って鍵をまわした。そしてギィ、と開かれた扉の向こうには、真っ白な布。その下に、はるが居るんだ。

腐らせないためか、ひんやりと冷房が効いてる。氷点下だこりゃあ。はるは寒くねぇのか、こんなところで寝て。


「はる、」


総悟が立ち寄る。俺もそれに続いてはるに近づいた。

ペラリと顔の布を取った総悟の手は震えてた。そこでやっとはるが死んだんだと理解する。

さっきまでの冷静さなんか吹っ飛んではるを抱きしめた。身体には布を被せたまま。それでも伝わるほどにはるは冷たく凍ってる。

隣では総悟が声を殺して泣きじゃくる。


「はるっ、はる…っ」


何で俺は気づけなかったんだろうか。思えばあいつはあんなに辛そうな顔をしてたのに。なんで今更気付くんだ。


命の代償
(なんで、気付けなかったのか)

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