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誰も何も言わずにジジィの背中を追う。途中山崎が、あ、と声をあげた。
「俺、局長呼んできます!」
「…ああ、頼む」
そう言うと山崎はぺこりと頭を下げて走ってった。でも分かる。あいつははるを見たくなかっのたかもしれない。あいつははるとは本当に仲良かった。
顔を合わせりゃ1時間は立ち話だ。そんなはるが急に居なくなったんだ。そりゃ目を塞ぎたくもなる。逆にこんな冷静な俺がおかしいんだ。
あーだこーだ考えてるうちにジジィが扉の前で立ち止まった。
「ここだ」
ジジィはそう言って鍵をまわした。そしてギィ、と開かれた扉の向こうには、真っ白な布。その下に、はるが居るんだ。
腐らせないためか、ひんやりと冷房が効いてる。氷点下だこりゃあ。はるは寒くねぇのか、こんなところで寝て。
「はる、」
総悟が立ち寄る。俺もそれに続いてはるに近づいた。
ペラリと顔の布を取った総悟の手は震えてた。そこでやっとはるが死んだんだと理解する。
さっきまでの冷静さなんか吹っ飛んではるを抱きしめた。身体には布を被せたまま。それでも伝わるほどにはるは冷たく凍ってる。
隣では総悟が声を殺して泣きじゃくる。
「はるっ、はる…っ」
何で俺は気づけなかったんだろうか。思えばあいつはあんなに辛そうな顔をしてたのに。なんで今更気付くんだ。
命の代償
(なんで、気付けなかったのか)
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