小説 | ナノ
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昨日は一睡も出来なかったな。そんな呑気な事を考えながら広間に足を運んだ。


「近藤さんおはよ」

「ああ、はるちゃんおはよう!」

「皆はまだ寝てるの?」

「いや、トシはそこの縁側に居るはずだぞ。総悟はミツバ殿の部屋だな」

「お姉ちゃん、目さましたの?」

「ああ、昨日の深夜な。」

「そっか。じゃあ今日は兄上、つきっきりだね」

「だな」


悪戯っぽくニカッと笑う近藤さんにあたしも同じように笑い返す。

それからあたしもお姉ちゃんの部屋に行く事にした。決めたんだ、もう嘘はつかない。


「お姉ちゃん」

「はる」

「おはよ」

「おはよう」


相変わらず怖いくらいに真っ白なお姉ちゃんにゴクリと息を飲む。

あと少しだから、頑張ってね。


「あのね、今日はお姉ちゃんに言わなきゃいけない事が二つあるの」

「なあに?」


手術のことは、昨日兄上と近藤さんと話をしてあたしから言うことになった。


「お姉ちゃんの病気を治せる病院をみつけたの。」

「えぇ!?」


お姉ちゃんはこれでもかってぐらい目を見開いた。そりゃそうなるよね。


「でもそれには手術が必要でね、勝手に決めちゃったんだけど明日、手術を受ける事になってるの」

「…ありがとう。嬉しいわ」


ふわりふわり、微笑むお姉ちゃんの姿を見て嬉しくなった。

だけど、あと一つ言わなきゃいけない事がある。言いたくない、なぁ。兄上きっと怒るだろうなあ。

あたしの横でお姉ちゃんと笑い合う兄上を見て、少しおびんだ。

でも、言わなきゃいけない気がするの。


「…あと、一つはね」

「ん?」

「………あたし、土方さんと付き合ってる」


言い切ったあと、案の定お姉ちゃんは目を見開いた。どこか、悲しそうに。

そんな顔見たくない、見たくないよ。言ってから、凄く後悔した。


「そ、そう」


そう言いながらまた微笑むお姉ちゃんを見て、どうしようもない罪悪感に見舞われた。

そして更に、咳き込んでしまった。


「ゴホッゴホッ…ッケホッ」

「姉上!!!はるてめぇなんのつもりでィ!!」


思いっきり、胸ぐらを掴まれて後ろの壁にぶつかった。


「そうちゃんっゴホッ…やめ、て…ケホッゴホッ…」

「おめぇは何がしたいんでィ!土方さんに好かれる姉上が羨ましかったか?」


ぎりぎり、拳に力が入ってるのが見てわかる。


「お前はいつも姉上を傷つける。姉上が何したってんでィ!」

「っごめん、ごめんなさ、い」

「謝罪なんか聞きたくねえ」


そこまで言うと兄上は手を離して力なく俯いた。そして、呟いたんだ。



「お前が病気になればよかったんでィ」



目の前が真っ暗になった。はやくこの部屋から出なきゃ、泣いてしまうからはやく、はやく出なきゃ。

足早に部屋を出たらそこには土方さんがいて、たぶん、話全部聞いてたんだと思う。だって土方さんの目が冷たいもの。お姉ちゃんを傷つけたあたしを軽蔑してるんだ。


「も、もう近づかない、近づかないか、ら、ごめ、ん、あたしが、あたし、が、」



死ぬから


許して






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