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神楽ちゃん達と別れてから余計に涙が止まらなくなって、とりあえず路地裏に移動した。
それでまた泣いて、あたしどれだけ泣くんだよ。どれだけ蹲ってたか知らないけどいつの間にか辺りは真っ暗。
そろそろ帰ろう、と腰をあげた。
路地裏から表に出れば街は人一人通ってない。何時なのか確かめるべく携帯を探すがどうやら忘れてきたみたい。
とりあえず帰るが先。足早に真選組屯所に向かった。
「…はるちゃん」
「あ、」
「今何時だと思ってんだ」
「ごめんなさい」
「心配したんだぞ?」
屯所に着いたかと思えば玄関では近藤さんと兄上が待ってた。これやばい。
「こんな時間までどこ行ってたんだ?」
「あ、あのね!病院行ったの!」
「病院!?はるちゃんどこか悪いのか!?」
「落ち着いてよ近藤さん。お姉ちゃんの病気が治せる病院みつけたんだ!」
「…お、おお!!!ほんとかはるちゃん!どこだそこは!すぐ行こう!今行こう!」
「落ち着いてってば、あのね、」
病院の説明をしようと言葉を繋げたらその前に兄上に叩かれた。
「痛い!なにすんの!」
「あんま心配かけんじゃねぇ。」
「…ごめん」
「でも、よくやったねィ」
そう言って頭を撫でてくれた兄上。心配してくれたことがすごく嬉しくて幸せで。
「でも病院だけでなんでこんなに時間かかるんでィ」
「あの、その、ぎ、銀ちゃんに…」
「なに!こんな時間まで男の部屋に居たのか!?」
「ち、ちがうよ」
このままだと埒があかないのでとりあえず今日は許してもらった。
大丈夫だよ、もうやらないから。
お風呂も済ませてお姉ちゃんの部屋に寄った。そこにはいつもに増して青白い顔したお姉ちゃんがきれいな顔で寝てた。
死んじゃったみたいに青白いその顔を見て泣きたくなる。
「大丈夫、もうすぐよくなるから」
寝てるお姉ちゃんにそれだけ呟いて部屋を出た。
自分の部屋に戻ろうとした時に土方さんとバッタリ遭遇。
朝のアレがあってからなんとなく気まずい。
「…あ、お風呂入んなきゃなぁー」
わざとらしくごまかして通り過ぎようと一歩一歩、足を前に出した。
だけどガッチリ掴まれたその腕によって前には進めない。
「…はる」
「…はい」
「朝は、その、悪かったな」
「何のこと?」
そう言えば土方さんは俯いてた顔を少しだけあげてあたしを見た。
分かってる、分かってるんだ。土方さんが何に対して謝ってるのか。
でもよく考えたら土方さんが謝る必要なんてないと思うんだ。
土方さんはただミツバさんが好き、ただそれだけ。何も悪い事なんかない。何も、悪くないんだ。
「土方さん」
「?」
「土方さんは、何に対して謝ってんの?」
「は?…いや、朝に、よ…その…」
「うん、分かってる、分かってるから」
そう言うと土方さんは気まずそうにあたしの顔をみた。
「いいよ、気にしてない」
それだけ言って風呂行くからって、理由をつけて土方さんから離れた。
早く、早くお風呂に入って、お顔の水滴洗い流さなきゃ。
(お姉ちゃんの手術が決まりました。)
(臓器移植です。)
(予定日は明後日)
(だからあたしの余命は24時間)
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