▼09


「はるさん」

黒子先輩に呼ばれて体育館からは少し離れた人目のつかないところまで来た。黒子先輩がわたしを連れ出したときのみんなの顔は目がこれでもかってくらいに開いてた。その顔を思い出して少し笑そうになったけどこれから黒子先輩が言わんとしてることを考えたら笑えなかった。

「貴方が僕を信用していないことはわかっています」
『そんなことないです!』
「そもそも貴方は僕以外にも誰も信用できる人が居ないでしょう」

黒子先輩の言葉に息が詰まった。否定も肯定も出来ないのが悔しい。ただひとつ言えることはわたしは黒子先輩の言う通り黒子先輩を信用していなかった。いつも気にかけてはくれるけど結局1番はお姉ちゃんなんだっていつも考えてた。

「ただのお節介だとは思いますが話せる範囲でいいので僕に話してください。溜め込んで自分を傷つけるような事はやめて下さい」
『傷つけてなんかいませんよ』
「気付いてないとでも思ってるんですか?はるさん最近素肌を出しませんよね。何でですか、刺繍のあとが見られるとまずいからですか?」

黒子先輩気付いてたんだ、ボディステッチ。悲しそうにわたしを見つめる黒子先輩から目を逸らして俯いた。なんだか申し訳なくて顔が見れない。

「そもそも声が出なくなった事がその答えじゃないですか」

それを言われてしまえば何も言えない。言葉に詰まってペンが止まった。今更なに言ったって黒子先輩にはお見通しなんだ。

「お願いですから、もう、自分を傷つけないでください」

そう言いながらわたしを抱き締める黒子先輩になにかが切れて目元が熱くなった。ぎゅう、と力強く抱き締められて少し苦しかったけどそれ以上に不思議な感情が胸を締めた。



この感情の名前は
(たぶんずっと前から持っていた、この感情は)



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