▼04


「はるは麻弥と違って何も出来ないわね」
「はるちゃんは麻弥ちゃんとは真逆なのね」
「はるこれくらいもできないの?」
「麻弥ちゃんは出来るのに」


昔からそうやってお姉ちゃんと比べられるのが大嫌いだった。あたしはあたしでお姉ちゃんはお姉ちゃん。それでいいじゃないか。何を比べる必要があるんだ。あたしがダメダメだっていう当て付け?

確かにあたしは容姿端麗というわけではなくて平凡。料理も苦手だし数学も苦手。本当にお姉ちゃんとは全然違う。自分でも分かってるんだよ。


「はる、麻弥はどうした」
「今日も委員会だったはずです」
「そうか」


それ以外は何も言わずに戻って行った赤司先輩を見てやっぱり天下の赤司様も完璧なお姉ちゃんに惹かれるもんなのか。完璧同士よろしくやっちゃえばいいのに。まあ赤司先輩がそういう意味でお姉ちゃんの事を気にしてるのかは分からないけど。


「はる、すまんがタオルとドリンクを頼めるか」
「あ、はい。」


緑間先輩にそう言われてカゴの中からタオルとドリンクを取って渡したらありがとう、と言って受け取った。


「緑間先輩のシュートって綺麗ですよね」
「…そう言ってもらえるとありがたいのだよ。」
「照れてる」
「う、うるさいのだよ!」


あたしの言葉に顔をカッと赤くした緑間先輩に思わず笑みが零れた。

でもそんな事してる暇なくて緑間先輩以外の1軍の方々にもドリンクを配らなきゃいけない。


「先輩、ドリンクどうぞ。」
「あ、ああはるちゃんか。麻弥ちゃんはいないのか?」
「はい。今日は委員会で」
「なんだそうなのか。つまんね」


そう言うと先輩は少し乱暴にドリンクを受け取った。確かこの先輩ってお姉ちゃんに1度告白して振られてた様な。懲りないなあ。つまんね、なんていう言葉に少しショックを受けたけど先輩あたしに良くしてくれるから悪くは思えない。


「はるちゃんボール磨いた?」
「すみませんまだです」
「ううん大丈夫だよ。じゃあボールはこっちでやっとくからはるちゃんは更衣室お願い」
「はい。ありがとうございます」


お姉ちゃんならボール磨きもドリンク配るのもとっくにおわっちゃってるんだろうなあ。あたしももっとテキパキしなきゃ。そう思い更衣室に足を運んだ。

ドアノブに手をかけたが中から声が聞こえてきたので出てくるまで待つ事にした。そしたらもうそこから後悔。中から聞こえてくる声はたぶん黄瀬先輩と青峰先輩だろう。


「麻弥っちって可愛いっスよね〜」
「あああいつは中々いい身体してるよな」
「ちょっと青峰っちどこ見てんスか。やめて下さいっス」
「本当の事だろうが」
「あ、麻弥っちといえばはるちゃんはどうなんスか?」


あたしの名前が聞こえてきて胸が高鳴った。


「あいつはナイだろ」
「そうっスよね〜。顔はまあそれなりに可愛いんスけど麻弥っちと姉妹だからなんか悪く見えちゃうんスよね」
「それにあいつ麻弥と違って何も出来ねぇじゃねえか」
「まあ確かにやる事遅いっていうか、」
「麻弥とは比べるもんじゃねえぞ。天と地の差だろうが」
「流石に言いすぎっスよ青峰っち」


言いすぎ、なんて言いながらも笑ってる黄瀬先輩の声に心臓が握り潰される痛さだった。確かにあたしはお姉ちゃんとは全然違う。何も出来ない。だけどそうやって比べられるのは昔から大っ嫌いだった。

ドアがキィ、と開き驚いた様にこっちを見る2人に笑いさえこみあげてきた。


「はるちゃん、今の聞いてた?」
「…いえ、今来たので」


そう言ったら2人はホッと息を吐いて歩いて行った。


どうでもいい
(消えてしまいたい)



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