さん
ジャンがあたしを置いてどこかへ行ってしまった。
ああどうしよう困った困った。
「ハル?」
「は、はい!」
「用があるんじゃないの?」
「え、あ、あの、」
どうしようどうしようアルミンに用なんてない。でもジャンがチャンスをくれたしなによりアルミンとお話はしたい。
でも好きな人とうまく喋れないあたしにそんな事が出来るかといったら無理だ。
「顔赤いけど大丈夫?」
「えっとあの、」
「どうしたの?具合悪い?」
「いや、悪く、ない、よ」
寧ろ真逆です。アルミンとこんなに話せるなんて幸せ。そんな事を思っていたらアルミンが少し屈んであたしの顔を覗き込んできた。
顔が、近い。
自分の額とあたしの額に手をつけて熱を比べるアルミンに動悸が早まる。
「熱は、ないみたいだね」
「はい…」
「ごめんね。ジャン呼んで来るから」
「え?」
「ジャンと話してるの邪魔しちゃったでしょ?」
やばい。アルミンが何か勘違いしてる。違うのに。あたしが好きなのはアルミンなのに。
ああもう本当に自分が嫌になる。
そうこう考えてるうちにもアルミンはあたしに背を向けようとしている。アルミンに嫌われるのだけは嫌だ。
「ア、アルミン!」
「ん?」
振り返ったアルミンが少しだけ微笑んで首を傾げた。
「あのね、あたし、アルミンのこと、す、すすすき、なの」
ヤケクソでそう言ったらアルミンは目をこれでもかってくらいにかっぴらいた。
「ハル、それ本気?」
「ほ、ほんきです!」
「…ありがとう」
え?ありがとう?これはなに、どう捉えたらいいのかな?
「君には嫌われているとばかり思っていたから嬉しいよ」
「…えええ、っとあの、」
「僕も好きだよ」
そう言ってアルミンの手があたしの頭に置かれた。
「、え」
「好きだよ、ハル」
それを聞いた途端今までの不安とか色々なものがふっとんでいってアルミンに飛びついた。
「アルミン、す、すきだよ…ぅ、」
「あはは、泣かないでよ」
顔は見えないけどきっと困ったように笑ってるんだろうなあなんて思いながらぎゅうぎゅうと抱きしめた。
そしたら背中に手がまわされてポンポン、と背中を撫でられた。
この手も、その顔も、優しいところも、世話焼きなところも、ぜんぶ、全部大好きだ。
叶わない恋程時を過ぎれば叶うもの
(僕も好きだよ)
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