∴仲直りと急展開




龍ちゃんからの告白の返答に悩んでいると、ドアがもの凄い勢いで開いた。そこに居たのは少しだけ息をきらしたちーちゃん。


龍ちゃんはちーちゃんを見ても驚くどころかニヤリと不適な笑みをあたしだけに見せた。

…龍ちゃんって本当いい性格してると思う。きっとこうなるのを予想してたんだ。演技派だな龍ちゃんは。


そうされたところでちーちゃんにはあの人がいるから意味があるとは思えないけど。


『…ちーちゃん、何しに来たの?』

「井吹、」

「はいはい分かってます出て行きますよー」


龍ちゃんはそう言うなり出て行った。


…待てよあたし。頭が働かんぞ。この状況は一体何だろか。今二人きりなのは辛い。


「…はる」

『…』

「泣くな」

『…関係、なっい』

「お前は俺が嫌いか?」

『…っ嫌い!だいっ嫌いだよ、ちーちゃ…風間先輩なんて』

「風間先輩…か。」

『今更、な…にっ』

「…あいつとキス等していない。」

『嘘だよ!あたし見たもん!』

「してないと言ったらしてない。俺の言うことが信じられんか?」

『…っだって、見た、もん』



そう言うとちーちゃん、じゃなくて風間先輩が一歩一歩近寄って来る。あたしも後ずさるがこれ以上は壁だ。


「逃げるな。」

『…っ』

「もう一度聞く。お前は俺が嫌いか?」

『だからっ、嫌いって…』


言ってるでしょ、そう言葉を繋げようとしたら喋るな、とばかりに手で口を塞いだ。


『…』

「本当に嫌いなら俺を振り払ってでも逃げろ」

『…そ、んなこと…』

「…」

『そんなこと、出来る訳ない、じゃん』

「何故出来ない」

『……』


黙り込むあたしを見た風間先輩が思い出したかの様にあたしの口から手を離した。


『か、風間先輩はズルいです…』
「…その呼び名は性に障る。」

『風間様』

「…違う」

『風間殿』

「ふざけているのか」

『…ちーちゃん』

「それでいい。そうやって俺を呼ぶのは貴様だけだ。」

『…』


最終的にちーちゃんは何が言いたいのだろうか。


「俺がそう呼ばすのもお前だけ。ここまで言っても分からんか」

『知らない』

「口で言って分からぬのなら無理矢理分からせる事も出来るが?」


そう言ってちーちゃんは妖艶に笑ってあたしの唇を指でなぞった。その感覚がゾワゾワして落ち着かない。


『や、めて』

「…最後に聞くぞ。お前は俺が嫌いなのか」

『……なわけ、ないでしょ。好きだよ、だいすきだよ。嫌いになんか、なるわけない。』


改めて言うと何故か照れるもので頬はもう真っ赤。

そんなあたしを見てちーちゃんは満足気に笑ってあたしの顎をクイッと持ち上げた。


何かを考える暇は無くて、あたしの唇はちーちゃんに奪われた。その挙げ句、唇の間からにゅるりとちーちゃんの舌が侵入してきた。


恥ずかしい声が何処からか漏れた。その何処かとは言うまでもなくあたし。

長いキスが終わり、唇が離れるとちーちゃんの薄い唇が開いた。


「一度しか言わん。よく聞け」

『…』

「俺はお前以外を愛した事は無い。これからも、そうだ。」

『…っちーちゃん!』


思いっきりちーちゃんに突進した。いや、ハグと言っとく。

思いっきりハグしたにも関わらずちーちゃんはよろける事もなく、あたしを受け止めてくれた。


『だいっきらいなんて嘘だよ』

「分かってる」

『本当はね、大好きだよ!』

「ああ。」

『だからつ、付き合って下さい』

「…ああ。」


ちーちゃんは小さく頷くと再びあたしを腕の中に閉じ込めた。



"ずっとずっと大好き!"




(Aさんとはキスしてないんだよね?)
(えーさん?)
(さっきの女の人)
(何度言えば分かる。同じ事を二度も三度も言うのは面倒臭いものだ。)
(じゃあ良かったー!)



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