∴イケメン来ました転入生が来た。藍色の斎藤さんぐらいの長さの髪で、顔は恐ろしいぐらいに整ってる子。 「井吹龍之介、です…」 緊張してるのか誰とも目を合わそうとせず、目の焦点が合わない。そんな龍之介くんを見て女子達が騒ぎ出す。うん、まぁ、確かに格好良い。 そしてその子はあたしの隣、平助くんの斜め後ろの席に座った。 『龍之介くん!よろしく!』 「あ、ああ…」 『あたし不知火はる!』 「俺藤堂平助、よろしくな!」 『ちびっ子は黙ってなさい!龍ちゃんはあたしと話したいんだって。邪魔しないでよもー!』 「んな事言ってねーだろ!龍之介が可哀相だぞお前」 なんか平助くん最近失礼。まあこういうゆるっとした会話好きだけどね。 にしても龍ちゃん可愛らしいな。なんていうか、作り物、って感じでホントに綺麗な顔をしてる。 『龍ちゃんは何でここに来たの?』 「行くとこも金も無くて、困ってたところを横暴なおっさんに拾われた。」 『そりゃ大変でしたね。で、今から龍ちゃんはどうするの?』 「さっきから龍ちゃんって何だよ!」 『いーじゃんいーじゃん!で、どうすんの?』 「…取り敢えず暫くは置いてもらえるらしい。」 『そっか。』 数秒間の沈黙の後声を発したのは紛れも無いあたし。 『………うち来る?』 「は?」 「お前何言ってんの?」 『イヤ、うちお兄ちゃんと二人暮らしでたまにちーちゃんが来るぐらいだから部屋も十分にあるし一人増えた所でどうって事無いよ。龍ちゃんが良かったらおいでよ!』 「…考えとく」 『うん!遠慮なくおいでねー!』 初めて会って同居なんて、って思うでしょうけど何だかほっとけないのよねー。 そこはお兄ちゃんと似てると思う。お兄ちゃんもたまに、子猫とか拾って来ちゃう。まぁ里親探して何とかしてるけど。 だから龍ちゃんの事も許してくれると思う。動物と人とでは意味が違うけど。まあどうにかなる、と思う。 そしてその日の放課後お兄ちゃんに龍ちゃんの事説明するために龍ちゃんを連れて生徒会室に来た。 『お兄ちゃん!』 「あ?」 『あ、ちーちゃんも!』 「お前それ誰だ?」 お兄ちゃんが早速龍ちゃんに突っ掛かった。 『龍ちゃん!』 「誰だよ」 『今日来たばっかの転入生だよー!』 「ふーん。で、その転入生が何の用だ?」 『あのね、龍ちゃんお家が無いらしいの。だから、一緒に住んでいいよね?』 「…は?お前遂にトチ狂ったか?」 失礼だなこいつ。あたし本気なんですけどー。ていうか龍ちゃん怖がるからその目やめてほしい。あたしも怖い。 『お願いー!』 「あ゙ー!分かったからくっつくな!お前名前なんつーんだよ」 「井吹」 「…はる、コイツ生意気」 『違う違う!緊張してるだけ!』 「いや、この顔で緊張してるはないだろ。」 『……龍ちゃんもっと照れた顔して!早く!』 「全部聞こえてんだよ!ったく。まぁー、なんつーかその、構わねーよ。」 『やっふぅぅぅぅ!ありがとうお兄ちゃん!だいすき!やったね、龍ちゃん!』 「いや、俺まだ同居するっつってねーし」 『…あ』 「あ、じゃねーよ。まぁ今日芹沢さんに話してみる。」 『あーい。帰ろっか。お兄ちゃん、ちーちゃん、ばいばーい』 二人にサヨナラして今日は龍ちゃんと帰る事にした。サヨナラって言うほどでもないけどねー。 並んで帰って思ったんだけど龍ちゃんって身長デカい。左之先生とかに比べたら小さいけどあたしからしたら大きい。 龍ちゃんは一緒に帰ってる間に案外笑顔を見せてくれるようになった。別れちゃうのが惜しかったけど龍ちゃんが頭撫でてくれたから我慢。 さて、ちーちゃん家にGO! 『ちーちゃん!』 「煩い。ドアぐらい静かに開けれぬのか。」 『ごめんちゃーい』 「……で?」 『…ん?』 「井吹とか言ったか?そいつの事をちゃんと話せ。」 『あぁ、龍ちゃんね。龍ちゃんはなんか、行くとこないんだって』 「…それは知ってる」 『ほ?じゃあ何を話せと?』 「風間、そいつ阿呆だからちゃんと言わないとわかんねーぞ。」 お兄ちゃんがどこからか姿を現してニマニマしながらそう言った。 「はる、察してやれよ。風間はお前と井吹の関係が知りたいんだとよ。」 『え?そうならそう言ってくれなきゃー!龍ちゃんはお友達だよ。』 そう答えるとちーちゃんは何も言わずに、でも何か言いた気にして、テレビへ視線を移した。はて。今日のちーちゃんはなんか可笑しい。 何かあったのだろうか。悶々考えながらご飯に手をつけた。 (原因お前だよ) (え!) (不知火、余計な事を言うな) (あたしも不知火です!) (…) top |