「お、沖田先輩」

「なんでィ」


困ったように眉を下げるはる。その理由がなんなのか、俺だ。

もちろんわざとやってるわけだけど。


「あ、なんでもないです、」

「あっそ」


それだけ言って再びチャイナ娘と戯れる。

そうするとはるはまた悲しそうに俯いた。2年の教室から3年の教室まで来たんだからそれなりの用はあったんだと思う。

だけどはるは何も言わずに戻ってった。少しやりすぎやしたかねィ。


「はる」


教室から出て少し前を歩くはるを呼び止めた。


「沖田先輩!どうしたんですか?」

「お前、用あったんじゃねぇんですかィ?」

「え、いや、用っていうかあの、あ、会いたいなぁ、って思って、その、」


もぞもぞそんな事を言われて我慢できる男なんかいるんだろうか。

とりあえずここじゃマズイしということではるの手を引いて移動した。


「わっ、ちょ、沖田先輩?どこ行くんですか、」


後ろで慌てるはるを無視してそのまま歩き続けてたどり着いたのが非常階段。

そこではるを壁に押し付けるかたちで半ば無理矢理口付けた。

時々漏れる甘ったるい声が愛おしい。

苦しそうに俺の胸あたりを叩くはるに気付いて唇を離した。


「沖田先輩、どうしたんですか、」

「別に」


そっけなく返してやればはるはまた悲しそうに眉を下げた。



そのかおがたまらない
(もっと困らせて)
(あわよくば泣かせたい)




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