「はる、筆箱忘れたんで貸してくれやせんかィ」

「はい、いいですよ!」


好きなの選んでください、とシャーペンを3本程前に出してくるはる。

女の子らしいピンクのやつとキャラクターのやつとシンプルな緑のやつ。

もちろんシンプルな緑のやつを取ったらはるはニコッと笑った。


「やっぱり男の子それですよね!神威先輩もこれ取ったんですよ!」

「…やっぱそっちのピンクで」


あのヤローと同じなのが気に食わなくてピンクのやつに変えてもらったらはるは一瞬驚いたように目をぱちくりさせた。


「沖田先輩は何色でも似合いますもんね!どうぞ!」


そのあとすぐに笑顔になってそんな事を言いながらピンクを差し出すはる。

男心が分かってんのか、それとも無意識か、どっちにしろこいつは心臓に悪い。

ま、人のモンですけどねィ。

それからは先生が言う事書く事を可愛らしい字で丁寧にまとめるはる。

俺も紙に視線を移すがめんどくせぇから言葉だけを耳に入れた。

それからしばらくして隣から焦った様な声が聞こえた。


「沖田先輩沖田先輩!」


小声で話しかけてくるはるに目を向けた。


「あの、美化強化月間の日にちいつって言ってましたっけ?」

「…来週一週間」

「ありがとうございます!」


一言礼を言うと再び紙に目を向けるはるからかすかに香るシャンプーの匂い。

ちょっとやばい。何がやばいかっていうと理性とかそういうのが色々やばい。


「お前…」

「はい?」

「いや、なんでもありやせん」


きょとんとしながら首を傾げるはるに耐えきれなくなり、髪に伸ばした手を急いで引っ込めた。


これは心臓もたねえ。



きけんじんぶつ
(もう無理マジでもたねぇ)
(はる大丈夫かなぁ)




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